「はなのすきなうし」
岩波の子どもの本
おはなし マンロー・リーフ
え ロバート・ローソン
2月の初めに立春を迎え、今年も季節は暦の上では春となりました。まだまだ寒い日もありますが、桜や、チューリップ等の春咲きの植物たちは、一年に一度の機会を楽しみに、土の中や蕾の中で少しずつ準備をしていることでしょう。
「はなのすきなうし」というお話はそんな花のにおいをかぐのが大好きなスペインに住む、うしのお話です。この絵本も、子どもの頃 大好きでよく母親に読んでもらいました。その頃は単純にこのお話の展開を楽しんでいたように思いますが、自身が母となり、この絵本を子ども達に読んで聞かせる立場になると、色々と気づかされる事がありました。
話は変わりますが、我が家には、ヨークシャーテリアの小型犬がいます。犬は嫌いではなかったですが、室内で犬を飼う、ということに全く興味がなかったのに運命の出逢いをしていまい、思いがけず一緒に暮らすことになったので、色々と勉強したわけです。
散歩はもとより、ドッグランやドッグカフェ等々、最近は、ワンコと一緒に楽しめる場所やイベントもたくさんあり、お出かけを楽しもうと思っていたのですが、我が家のヨーキーは本当にビビりで、
他のワンコ達と全く遊べないのです。食べることが大好きなので、運動不足になってもいけないと思い、散歩だけは苦心の甲斐あってよく歩けるようになりましたが、家に近づくと嬉しそうに早足になり、帰宅するとホッとした表情をしています。犬といえば、散歩は大好き、広い場所では走り回るものだという私の固定概念は打ち砕かれました。そして、ある日、久しぶりに「はなのすきなうし」を手に取り、孫に読み聞かせていた時に、ふっと我が家のヨーキーが浮かんだのです。
家のヨーキーも、もし飼い犬ではなかったら、フェルジナンドのようにみんなから離れて、木陰に座っていたんだろうなぁと…
動物にも、それぞれ性格があり違うように、子ども達にももちろん個性があります。でも、母親になると、子どもの頃の気持ちは遠のいてしまい、みんなと一緒だと安心、一人でいると友達いないの?
と心配になってしまいがちです。
この物語の主人公「フェルジナンド」のおかあさんも、友達と一緒に遊ばず一日中コルクの木の下で花のにおいをかいでいるむすこの事が、一人ぼっちで寂しくないかしらと心配し、尋ねます。そして、むすこと話し、寂しがっていない事がわかると、よく理解し、むすこの好きなようにしておくのです。絵本の文の中にあるように、本当によくもののわかったおかあさんだと思います。
子ども達は、当たり前ですが、いつまでも小さな子どもではありません。子どもがその子らしくいられる為には、一番近くにいる親の理解が不可欠です。私もそんな当たり前の事に気がつくのに随分と時間がかかりました。みんな一緒ではない、一人一人違って、それでいいということに。
子どもが成長し、社会へ出ていった時には、自分が「はなのすきなうし」のような人かもしれないし、近くにそのような人がいるかもしれない。
でも、普通に認め合い、平等に関わり合える社会であってほしいと願い、また、この絵本を読んだ
子ども達の心の中に、ぼんやりとそんな感覚の芽が宿ってくれるといいなぁと思うのです。
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