絵本「スイミー ちいさな かしこい さかなの はなし」

「スイミー」
 ちいさな かしこい さかなの はなし

好学社

レオ=レオニ
訳 谷川俊太郎

レオ=レオ二 | 祈りの丘絵本美術館 | こどもの本の童話館グループ

私が、はじめてレオ=レオニという絵本作家を知ったのは「あおくんと きいろちゃん」という絵本。
とても綺麗な色彩で描かれていて、混ざり合うと黄緑色になる透き通った色合いが印象的な絵本でした。
  「あおくんときいろちゃん」も、シンプルな中にとても深いメッセージが込められている素晴らしい絵本ですが、今は暑い季節なので、海のお話を紹介したいと思います。

お話は…広い広い海の中、小さな魚のきょうだいたちがくらしてた。みんな赤いのに一匹だけ真っ黒な魚がいた。それがスイミー。みんなと違ってたけど、泳ぐのは誰よりも早かった。
そんなある日、おそろしいマグロがやって来て、きょうだいたちがあっという間に飲み込まれ、スイミーだけが逃げ延びた。そして…

寂しく、悲しいスイミーは、失意の中、暗い海の底をただひたすら泳いでいくうちに、海にある素晴らしく面白い生き物や植物に出逢い前向きになっていくのです。

にじいろのゼリーのような くらげ、すいちゅうブルドーザーみたいな えび、
さかなやこんぶ と、海の中で暮らす生き物や植物、岩や砂利等を、レオレオニさんは、様々な技法や彩色を駆使し、それはそれは、例えようもない美しさで表現されています。
優しい色合いや海の透き通る色。様々な色が混ざり合い、醸し出す海の世界。景色や、底辺の砂利や砂に至るまでの、何とも言えないセンスの良さ。
グラフィックデザイナーや、画家や彫刻家としても活躍された作者の素材の知識や技術の確かさが感じられます。

きょうだいの中で、一匹だけ黒く生まれてきたスイミー。どうして、自分だけ黒いのかなと、気になる時もあったでしょう。でも誰よりも泳ぐのが早く、マグロにおそわれた時に、一匹だけ逃げ延び、生き残り、強く生きていきます。
レオ=レオニのお話の主人公は(すべて知っている訳ではありませんが)、他者と違う自分は何者だろうかと悩んだり、小さな生き物が知恵と勇気で危機を乗り越えようと、頑張ったりします。そして皆、家族や友人をとても大切にしています。

スイミーも、自分の仲間や居場所を守る為に、勇気をもって皆を鼓舞し、知恵を出し、皆の中で自分だけ黒いという個性を最大限に生かして大きな魚に立ち向かっていくのです。
大きな海の中の小さな生き物達の世界のお話を、繰り返し手に取りながら、やがて、自分の世界に置き換えてみたりして、色々な事を感じたり、学んだり、勇気をもらったりしながら、創造力が育っていくのではないでしょうか。
小さな子ども達の大きな成長の傍に、置いておきたい絵本です。