絵本「だいふくもち」

「だいふくもち」

福音館書店
田島征三 作

だいふくもち|福音館書店

何歳の頃のことか、記憶が曖昧ですが「こどものとも」の月間絵本で出会い、面白くて何回も何回も読んだ絵本です。
絵本作家 田島征三さんによって作られた1977年の作品で、大胆な筆のタッチと泥臭い感じの絵の具?の色と、「ごろはちだいみょうじん」と同様に方言(こちらは土佐弁)で綴られるお話が独特で、印象的です。

お話は…
怠け者のごさくが、いつものようにゴロゴロしていると、ある晩「ごさく」と、自分を呼ぶ声が聞こえてきます。どこから聞こえてくるのかと探してみると、なんと、床下に300年も住み着いているというだいふくもちを見つけました。
そのひしゃげた だいふくもちが、300年も何も食べてないから、小豆を食わせろと うるさいので、隣の家から小豆を1升もらってきて ひしゃげた だいふくもちの上にのせてやると、だいふくもちは、むっくりもっくりとうまそうに小豆を食べて、やがて「ぽこん」と小さなだいふくもちを産んだのです。
産まれた だいふくもちがあんまり美味しそうなので、ごさくが食べてみると、これがとても美味しい! 怠け者のごさくでしたが、これは売れると、小さなお店を出します。
餅は美味しくて評判になり、売れに売れ、ごさくは大金持ちになっていきます。ところがある日、ごさくが欲張って山盛りの小豆を無理やりに食べさせた為に…  というお話。

最後は ちょっと怖いのですが、また、読みたくなるのは、やはり、ひしゃげた だいふくもちが小豆を食べて、こんまいだいふくもちを産むシーンを見たくなるからではないでしょうか。
私がそう思うから、読んだ人はみんなそうではないかなぁと、思ってしまうのですが、本当に美味しそう。なんとも絵の力がすごくて、美味しそうで、読むとお餅が食べたくなります。

このお話は民話ではなく、作者のオリジナルだと記憶していますが、日本の昔話や民話、更には外国の童話等は、怖いものが多いですよね。教訓めいていたり、悪い人のいなくなり方も ちょっと残酷だったりします。
それでも、子ども達は昔話が大好きです。
紙芝居でも、昔話となると、のめりこんで、集中して聞いてくれるのです。
このお話の ごさくにしても、あんまり欲をかくと痛い目にあいますよという教訓のようなものを後に残してお話は終わります。
でも、そんなラストだからこそ、心に残ると共に、子ども達の 賢くなりたい、大きくなりたい、強くなりたい、正しい人になりたいという気持ちを搔き立て、夢中になって聞いてくれるのかなと、感じます。

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絵本「ごろはちだいみょうじん」

「ごろはちだいみょうじん」
福音館書店
中川正文 さく
梶山敏夫 え

ごろはちだいみょうじん こどものとも絵本 : 中川正文 | HMV&BOOKS online - 9784834002034

「べんてはんの もりの ごろはちは、えらいてんごしいの たぬきやった。」
ということばで始まる この絵本は1969年に福音館書店から発行されている 古い絵本です。
この温かみのある方言の言い回しと、絵の感じが面白いというか印象的で、大好きな絵本でした。
調べてみたら、この方言は、作者が生まれ育った、奈良県は大和地方の方言だそうで、その言葉で語られる心にしみる物語。

作者の中川正文さんは、京都女子大学教授、日本児童文学学会会長等を歴任され、自動文学の向上に尽力した方のようです。
絵本もたくさん作られていますが、私が知っているのは「ごろはちだいみょうじん」の他に「きつねのおはなはん」「ねずみのおいしゃさま」「いちにちにへんとおるバス」があります。どれも、温かいストーリーが魅力の素敵な絵本です。

絵を描かれた梶山敏夫さんは、様々な絵本で印象的な絵を描いておられる絵本作家ですが、画家としても抽象画、木版画、陶作品、ガラス絵など、様々な分野で才能を発揮されていた方だそうです。
あまり直線がなく、ゆらゆらとした太い線と細い線の筆のような質感の輪郭で、動物や植物、建物や人間が描かれている特徴のある絵のタッチでが温かみがあり、私はよく昔話や民話の物語で、この方の絵に親しんできました。
私の知っている作品では「ごろはちだいみょうじん」の他に「さんまいのおふだ」「島ひきおに」「おんちょろちょろ」等、たくさんあります。

お話は…
べんてはんの森のごろはちは、たいそういたずら者で、人をだましたり、ごちそうを盗んだりしていましたが、ごちそうを盗んでも、後で山の木の実を返しておくような几帳面なタヌキでした。
ある時、村はずれで鉄道を敷く工事が始まりました。やがて工事が終わり、初めて汽車が音を立ててやってくるのを見た村人たちは、煙をはいて近づいて来る、へんてこりんな、かぶとむしのおばけみたいなものを、汽車だとは思わず、
「ひょっとしたら、こら ごろはちにだまされとるのとちがうやろか」と、ごろはちが化けたものだと勘違いし、笑いながら、線路に飛び出してしまいます。
それを見たごろはちは、「てんごと ちがう。わるさしとるのやない。あれは ほんものやがな」と、汽車の前に立ちはだかり…。

なんとも悲しい結末ですが、そこは、悲しい中にもユーモアを交えたラストになっていて、心が温まる終わり方となっています。
方言というのは、不思議ですね。子どもの頃 私は何度か読んでいて、意味が解らないから面白くないと思ったことは 一度もありません。
何度か読むうちに、リズムのようになって、体にスッと入り、心地良く物語を楽しめるものになっていきます。
「ごろはちだいみょうじん」も、方言の温かみを感じながら、ユーモアの中にある人情や情け深さ、思いやりなどに感じ入る 味わい深い名作絵本です。

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