「トマトさん」
福音館書店
田中 清代(たなかきよ)・さく
表紙に入りきらない迫力のある、マダムのような真っ赤なトマトの絵。この印象的な表紙で、なんとなくこの絵本を避けてしまう人は結構いるのかなと思います。現に私も、その一人でした。
でも、夏の暑い日に、読み聞かせする絵本を探していると「あーら、今日の読み聞かせは、わたしでいかが~~」ていう声が、聞こえてきた気がして手に取って読んでみたら、もうほんっとーに!素晴らしい絵本でした。
ジリジリと暑い真夏のある日の昼下がり、トマトさんはきから落ちます。その時の 「どった、」 という文面の表現で、このトマトさんが大きくて立派でよく熟れたトマトだという事がわかります。
トマトさんは地面に落ちてから、ますます暑くなり、暑くて暑くてたまらなくなります。そんな時、近くを流れる小川にミニトマト達が「ぽちゃん」と、飛び込む涼しそうな音が聞こえてきます。うらやましいトマトさんですが、体が重くて動くことができません。
でも、それを周りの虫や小動物たちに伝える事ができず、とうとう涙を流し始めます。そして…
最後には、もちろん、トマトさんも小川に飛び込む事ができるのですが、そこに至るまでの心の動きや、周りにいる様々な生き物の優しさ、楽しさや気持ちよさを共有する心地良さは、子ども達の人間関係にも反映して、とても心が温まります。
また、いかにも暑苦しそうなトマトさんが、水に飛び込んだ時の様子と、更に水浴びの後に、岸に上がって休む最後のページが、本当に気持ちよさそうで、私の大好きなページです。
「かぜが さらさらと ふいて、みんなは すっかり すずしくなった。」
読み聞かせをしている私のところまで、心地よい風がふいてきてくれて、読み終わると、いつも清涼感で包まれるような気持ちになります。
今年も暑い夏になりそうです。暑い夏に読み終わった一瞬、涼しさを感じられるこの一冊を手に取ってみてはいかがでしょう。
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