ひろすけ童話「むく鳥のゆめ」

ひろすけ童話「むく鳥のゆめ」

集英社版
浜田廣介 作
深沢邦朗 画

s 昭和書籍 初版 ひろすけ童話 むく鳥のゆめ 浜田廣介 画 深沢邦朗 オールカラー 集英社 昭和42年 昭和レトロ /F45(絵本一般 ...

昔、夜眠る前に母によく読んでもらった絵本。とても古い絵本ですが、大切にしています。
浜田廣介という、とても有名な童話作家の作品なので、何作か同じお話の絵本が出版されていますが、実家にあったのはこの絵本でした。
以前にブログに記した「ないた あかおに」もこの方の作品です。

お話は…
広い野原の真ん中に立つ古いくりの木。その木のほらの中に、むく鳥の子どもと、とうさん鳥が住んでいました。
秋になり、すすきの ほ が白くなると、とうさん鳥は、その ほ をくわえて 
すのなかに持ってきて温まり、やがて寒い冬を迎えても、そのすすきのほ のおかげで困らずに暮らせていました。

寒く天気の悪い日が続いたある日、むく鳥の子はふと、母さん鳥に気がつきます。遠いところへ出かけたと思っていたけれど、なかなか帰ってこないのを気にして、とうさん鳥に尋ねます。
とうさん鳥は、かあさん鳥がもう この世にいないとは言えず、
「いまごろは、うみの上をとんでいるの。」
「もう、いまごろは、やまをこえたの。」
と、聞くむく鳥の子に、「ああ、そうだよ。」と、答えるだけでした。
なかなか帰ってこないかあさん鳥が恋しいむく鳥の子は、木に残った たった一枚の葉っぱが、かさこそ、かさこそ…というだけでも「おかあさんかな」と、思ってしまっていました。
でも、寒くなり、風が今にも茶色くなった枯れ葉をもぎ取ってしまいそうです。
それを見た むく鳥の子は…

とても寂しく、切ないお話。でも私は、このお話を母親に何度か読んでほしいといったのでしょう、読んでもらった事をよく覚えています。
子どもにとってお母さんという存在が、どれほど大切なものか、どれほど恋しいものかが、切々と伝わってくるこの絵本を、読んでもらった声や腕枕してもらったぬくもりを思い出すのです。
前回、ブログに記した「ねないこだれだ」と同様に、むく鳥の子がお母さんを恋しがり、葉っぱのゆれる音にお母さんを感じて眠る姿に、心がきゅっとなったり、そばにいるお母さんを感じて安心したり という相反する感情が、子どもの感受性を豊かに成長させてくれるのかな、だから、印象的で、よく覚えているのかなと、思いました。

またこの絵本は、深沢邦朗という童画家が描いておられる 挿絵もとても素晴らしく、秋から冬に移り行く季節や、雪がしんしんと降ってくる様子、木の色やすすきの穂のあたたかそうな風合い、色合いの少ない季節に反してきれいな羽のむく鳥の子の姿など、印象的な素晴らしい挿絵です。

寒くなって来たこの季節に、読んであげたい名作童話です。

 

絵本「クリスマスの三つのおくりもの」

「クリスマスの三つのおくりもの」
福音館書店

林明子 さく

クリスマスの三つのおくりもの :HON0007:木のおもちゃ ウッドワーロック - 通販 - Yahoo!ショッピング

かすみちゃん、もっくん、れいちゃんの3きょうだいに訪れた、クリスマスの不思議な出来事を描いたお話が3冊セットで、箱に入っている可愛い絵本。
手のひらサイズの小さな絵本は、持っているだけで嬉しくなるような素敵な箱に入っています。
作者は、以前にも「はじめてのおつかい」や「おふろだいすき」で紹介させて頂いた、私も大好きな絵本作家 林明子 さんです。

お話は…
まず「ふたつのいちご🍓」
 クリスマスにおかあさんがケーキを作ったのですが、いちごが三つしかのっていません。おかあさんは、もうどのお店にもいちごが売っていなかったけど、子どもたち3人分はあるからいいでしょう、と伝えます。
でも、きっと、お父さんとお母さんもいちごを食べたいと思っているでしょと、かすみちゃんは、いちごを探しに出かけます。少し前の季節にいちごがなってたとこを思い出し、張り切ってそこへ行ってみるのです。
でも、そこには枯れたはっぱがあるだけでした。あきらめきれないかすみちゃんは
森の方へ足を延ばしあちこち探していると、うさぎの子どもを見かけます。
そして…というお話。

思いやりと優しさがいっぱい詰まったストーリーがクリスマスにピッタリです。
1ページ目を開くと、題字の下にもう少し暖かな季節にかすみちゃんがいちごに手を添えている絵が載っています。あ、かすみちゃんが探しに行った いちごは、このいちごだったんだね、前に見かけたいちごの様子が描かれているところも、描写が丁寧で楽しめます。

2冊目は「サンタクロースとれいちゃん」
 ベッドでサンタクロース🎅をまっていた れいちゃんは、なかなかやってこないサンタクロースにしびれをきらして、起き上がり、サンタクロースを探しに行きます。どんどん歩いて森の入口まで行くと、なんと向こうの方からサンタさんが歩いてくるではありませんか。
れいちゃんはプレゼントの事を聞きたくて「サンタさん サンタさん」と、話しかけますが、急いでいるサンタさんはれいちゃんに気がついてくれません。おまけに、袋に穴が開いていて、プレゼントがポロポロ落としてしまっています。
さあ、どうなっちゃうのかな…
世界中の子ども達が会いたいと願っているサンタクロース。そんなサンタクロースに出逢えた、小さな女の子の心温まるストーリーです。

そして3冊目は「ズボンのクリスマス」
きょうだいで唯一の男の子、もっくんのお話です。
絵本を開けると、サンタさんから赤い消防自動車をもらい、喜んでいるもっくんの様子からお話が始まります。

この車も「サンタクロースとれいちゃん」のお話で、ちゃんともっくんの靴下に入ってて、お話のつながりを感じることができます。
大喜びのもっくんはこの赤い車に夢中で、もうすぐ家族で出かけるというのに、ちっともズボンをはきません。
今日はクリスマスで、今から家族でおじいちゃんとおばあちゃんの家にパーティーに出かける予定があり、みんな支度をしているので、なかなかはいてくれないもっくんにズボンもやきもきして、もっくんの背中をつつきますが、知らん顔をされたので、待ちきれなくなって外へ飛び出していきます。
びっくりしたもっくんは、慌ててズボンを追いかけて…というお話。

最後に到着したおじいちゃんとおばあちゃんの家で無条件に褒められ、嬉しそうに笑うもっくんの表情に幸せを感じるラストです。

何度も読んだクリスマスの素敵な絵本。最後の最後のページには「クリスマスのおおさわぎ」という面白い歌も載っています。
登場する子ども達の愛らしさと優しさに、心温まるこの絵本を一緒に読んで楽しんでいただきたいなと思います。
また、クリスマスも近くなってきたこの時期に、世界中の子ども達の幸せを、もう一度神様に祈りたいと思います。
戦争や紛争、また、災害などで命を落とした方々に、どうか安らかにと、また、来年こそは、平和な世界になりますようにと、願っています。

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絵本「ねないこ だれだ」

「ねないこ だれだ」
福音館書店
せな けいこ  さく・え

想造舎 | 子ども劇場 | 幼児のための音楽影絵 こわくてなくぞ「ねないこだれだ」影絵音楽団くぷくぷ | インドネシアのガムランとワヤン・クリ

「とけいが なります ボン ボン ボン…… こんなじかんに おきているのは だれだ?  ふくろうに みみずく くろねこ どらねこ……
いえいえ よなかは おばけの じかん」
そうやって始まる小さなサイズのこの絵本は、有名な絵本作家 せなけいこさんの
「いやだいやだのえほん」シリーズのうちの一冊です。

夜遅くまでおきていると、表紙に描かれている「おばけ」が子どもをさらいにきて、空の彼方のおばけの世界へ連れていかれてしまう。という、ちょっと怖い、短いお話。

絵はすべて「ちぎり絵」で表現され、夜を表現した暗いバックに、ちぎり絵の真っ白いおばけや、ねこ等が印象的に描かれています。
作家のせなけいこさんの「せなけいこ展」へ、いつだったか行ってきましたが、お寿司の折詰めに使われている包装紙ののような小さな包み紙でさえも大切に保管して、絵本製作や挿絵等に使われていたことを知りました。
確かに、包装紙って、素敵な模様や色合いがたくさんありますよね、昔は、今よりももっと凝っていたような気がしますし、大人になり、そういう裏話を知って絵本を開くと、新たな楽しみ方が生まれます。

前述のように、ラストは少し怖いのですが、この「怖い」という感情は、どの様なものでしょう。おばけや暗いところを怖がるというのは、生まれ持った気質により、個人差が大きいと思われますが、子どもが「怖い」と明確に感じられるようになるのは、だいたい3歳頃からと言われています。
生まれてから様々な経験をし、言葉を覚えた子どもは、想像力や見通しを持つ力が身につき、暗い=怖い、おばけ=得体のしれない怖いもの、といった知識が植え付けられていくのでしょう。
それは、成長なのですが、あんまり怖がりがひどいと、怖がらせるのも良くないかなぁと思ってしまいますよね。
夜、おばけの絵本を読んで、ちょっと怖い気持ちを抱かせながら眠る…なんていいのかなぁと…
でも、暗い夜に、寝ないと連れてかれちゃうって、お母さんやお父さんにしがみついて安心して眠る事で、愛情を感じ、自己肯定感が育ち、感受性が豊かになっていくような気がします。
更には、心が育つことで、反対の感情である、「笑い」「喜び」の感情が育っていく大切な要素も、そこにはあるような気がします。

また、夜遅くまで起きていたがる子どものしつけの為の絵本かと思いがちですが、せなけいこさんは、しつけの為に描いた絵本ではなく、子ども達が怖いけど見たがる、怖いけど可愛い、子どもがお友達になれるおばけを描いてみようという気持ちで絵本を作ったと、何かで読みました。

1969年11月初版で、半世紀ほど経ちます。
作者のせなけいこさんは、2024年10月23日、老衰のため亡くなられた事が報じられましたが、自身の子育ての経験を基に発想した、独自の世界観と、ストーリーは、これからも沢山の子ども達に愛され読み継がれていくことでしょう。

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絵本「コーギビルのゆうかい事件」

「コーギビルのゆうかい事件」

メディアファクトリー

ターシャ・チューダー/絵・文
食野雅子/訳

コーギビルのゆうかい事件/ターシャ・テューダー/絵・文 食野雅子/訳 本・コミック : オンライン書店e-hon

この第2作「コーギビルのゆうかい事件」は、前回、書き記した第1作「コーギビルの村まつり」から26年後の1997年、ターシャ82歳の時の作品です。

「コーギビルの村まつり」ではまだ子犬だったコーギー犬のケイレブは、ヤギレースで得た賞金を大学へ行く為の資金にするために貯金していましたが、この第2作では、大学を優秀な成績で卒業し、コーギビル村の有名な探偵事務所で働いている設定になっています。

さて、内容は…
探偵事務所で働いているケイレブは、最近 村で見かけるアライグマが増えている事が気になっていました。悪がしこいアライグマのこと、何か企んでいるにちがいないと、調べ始めていたところ、色々と怪しい動きに気づきます。
そんな時不安が的中し、マート達が大切に お世話をしている世界一のおんどり、ベーブが誘拐されてしまいます。
捜索に許される時間は、4時間しかありません。ベーブの命を助ける為に、ケイレブは、一人では救出に向かいますが…。という展開です。

ケイレブが、アライグマの動きが怪しいと、調べていく過程での村の 住民たちとの細かいやりとりや、何を企んでいるのか気付く場面のスリリングな展開は、絵本なのに、立派に探偵物のストーリーさながらで、読んでいる私たちも「ベーブがあぶない!」と、ハラハラします。
また、ケイレブがベーブを見つけ出し、助け出す場面も、勇気とスピード感にあふれていて、この作品を作り上げたターシャの年齢を考えると、尊敬しかありません。きっと、どんなに歳を重ねようとも、子ども心を忘れない、少しわがままな、チャーミングな女性だったのではないかと勝手に想像しています(笑)

様々な紹介文で、ストーリーは素晴らしいが、さすがに82歳という年齢のせいか
「コーギビルの村まつり」と比べて絵の緻密さに衰えが…という評価を見かけますが、確かにそうです。
線画もラフで、二重に見えるところもありますし、色合いも精彩を欠いているのかもしれません。
それでも、前作より というだけで、全体の街並みやページごとの構成のセンスの良さ、小物類を丁寧に描き込まれているところなど、見事です。
何より、ストーリーがよく考えられていて、様々な伏線を回収しながら、エンディングへ向かっていくスピード感は、「コーギビルの村まつり」同様、感動ものです。
その後、コーギビル村へ帰り、村のみんなに歓迎、慰労してもらったケイレブと鶏のベーブが、1番最後のページで 握手しているのが微笑ましく、最後の最後のページまで手を抜かず作り上げる、ターシャ・チューダーの絵本作りの情熱に感じ入ります。

ターシャ・チューダーという方の生き方にも、興味を惹かれる この名作絵本を、是非手に取って、読んで頂ければと思います。

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絵本「コーギビルの村まつり」

「コーギビルの村まつり」

メディアファクトリー

ターシャ・チューダー/絵・文
食野雅子/訳

コーギビルの村まつり | 子育て絵本アドバイス

アメリカの小さな町や村の最大のイベントは、おまつり。この絵本の舞台であるコーギビル村もそうでした。
この物語は、クリスマスの次に楽しい 村まつりのお話で、主人公はコーギー犬のケイレブです。他にも、犬、猫、ウサギ、ニワトリ、カラスが登場します。そして、忘れてはいけないのが、ボガートという妖精です。
妖精というと、可愛らしい姿を想像しますが、この絵本に出てくる妖精は、どちらかというとトロルのようです。でも、このボガートが、結構キーパーソンで、この絵本を面白くしてくれています。

コーギビルの村まつりの最大のイベントは、ヤギのグランドレース。ケイレブは、このレースに向けて、ヤギのジョセフィーンを何カ月もかけて調教したり、体重管理をしたりしてきました。また、ヤギの事に詳しい、ボガートのマートのところへ足しげく通い、色々アドバイスも受けていました。
でも、優勝を狙う、ずる賢い猫のエドガー・トムキャットが、汚い手を使って、ケイレブの邪魔をしようとしていて…という展開。

お話は、場面場面ごとに細やかな描写で描かれているし、主要人物、例えばケイレブの家族一人一人の性格や暮らしぶりや、お祭りに向けてどんな風にこの一年を過ごしてきたか等もほのぼのと、丁寧に描かれているので、お話はその分長くなるのですが、だからこそ、絵本の世界に入り込み、感情移入できるような気がします。

また、宿敵トムキャットについても、あまり村で評判が良くない理由も早い段階で触れています。
様々な人物の感情が絡み合い、おまつりに向けてお話が進んでいき、そして、9月になり、収穫の時期になってくる頃には、準備も最終段階に入る様子が念入りに描かれます。そして、お祭り当日の一日の流れや、ヤギレースへの不穏な流れも分刻みで描かれ、スピード感が増し、ワクワク ハラハラ ドキドキの展開に、読者は、お話の世界に引きずり込まれていきます。
一年間、おまつりを楽しみに日々の生活を頑張る村の人々や、育てた農作物や生き物への愛情など、これこそが本当に子育てに大切なものなのではないかと、思い出させてくれるお話を、久しぶりに手に取ってみて、忙しすぎる今の世の中、こんな風に暮らしてみたいな、いや、でもやっぱり大変だよなぁなーんて、ちょっと考えてしまいました。



とても、読みごたえのある一冊ですが、なんといっても、絵が素晴しく、何と表現したら伝わるのかわかりません。
お店屋さんひとつとっても、隅々まで丁寧に描かれていて、家具、雑貨や食べ物に至るまで全てこだわりをもって描かれています。

主人公のケイレブは作者である ターシャの愛犬、また、出てくる動物たちは、すべて、ターシャが飼っている動物たちがモデルだと思われるので、絵の中の生き物たちへの作者の愛情が伝わってきます。
動物好き、特にコーギー犬好きには、たまらない絵本だと思います。

作者のターシャ・チューダーは、アメリカの絵本画家、挿絵画家、人形作家、園芸家です。
ターシャが1971年 57歳の頃に、ニューイングランド地方 バーモント州南部の小さな町で、30万坪の広大な土地に「コーギーコテージ」と言われる家を建て、庭を作り、スローライフな生活を営み始めます。
一日の大半を草花の手入れに費やし、着るものやエプロンを手作りし、山羊の乳を絞り、庭でとれた果実でジャムを作り、パイを焼いたりして暮らしていたそうです。

「コーギビルの村まつり」は、いつ描かれていたのか詳しい事はわかりませんが、ちょうどターシャが生活を変化させた頃に、刊行されています。
日本での出版は、それよりも20年程後のことになりますので、私はその頃購入して、子ども達に読んであげていました。
子ども達、特に長男は このお話が大好きで、何度も何度も読み聞かせをしましたが、長いので、私の方が先に寝落ちしてしまう事も度々あったと記憶しています。

ターシャ・チューダーについては、沢山の書籍や、また、テレビなどで紹介されています。その暮らしぶりや、どうして、その様な生活を営むに至ったか等、文章では伝えきれないので、是非、物語の中のような暮らしぶりを、書籍や映像で のぞいて見て頂ければと、思います。

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絵本「スイミー ちいさな かしこい さかなの はなし」

「スイミー」
 ちいさな かしこい さかなの はなし

好学社

レオ=レオニ
訳 谷川俊太郎

レオ=レオ二 | 祈りの丘絵本美術館 | こどもの本の童話館グループ

私が、はじめてレオ=レオニという絵本作家を知ったのは「あおくんと きいろちゃん」という絵本。
とても綺麗な色彩で描かれていて、混ざり合うと黄緑色になる透き通った色合いが印象的な絵本でした。
  「あおくんときいろちゃん」も、シンプルな中にとても深いメッセージが込められている素晴らしい絵本ですが、今は暑い季節なので、海のお話を紹介したいと思います。

お話は…広い広い海の中、小さな魚のきょうだいたちがくらしてた。みんな赤いのに一匹だけ真っ黒な魚がいた。それがスイミー。みんなと違ってたけど、泳ぐのは誰よりも早かった。
そんなある日、おそろしいマグロがやって来て、きょうだいたちがあっという間に飲み込まれ、スイミーだけが逃げ延びた。そして…

寂しく、悲しいスイミーは、失意の中、暗い海の底をただひたすら泳いでいくうちに、海にある素晴らしく面白い生き物や植物に出逢い前向きになっていくのです。

にじいろのゼリーのような くらげ、すいちゅうブルドーザーみたいな えび、
さかなやこんぶ と、海の中で暮らす生き物や植物、岩や砂利等を、レオレオニさんは、様々な技法や彩色を駆使し、それはそれは、例えようもない美しさで表現されています。
優しい色合いや海の透き通る色。様々な色が混ざり合い、醸し出す海の世界。景色や、底辺の砂利や砂に至るまでの、何とも言えないセンスの良さ。
グラフィックデザイナーや、画家や彫刻家としても活躍された作者の素材の知識や技術の確かさが感じられます。

きょうだいの中で、一匹だけ黒く生まれてきたスイミー。どうして、自分だけ黒いのかなと、気になる時もあったでしょう。でも誰よりも泳ぐのが早く、マグロにおそわれた時に、一匹だけ逃げ延び、生き残り、強く生きていきます。
レオ=レオニのお話の主人公は(すべて知っている訳ではありませんが)、他者と違う自分は何者だろうかと悩んだり、小さな生き物が知恵と勇気で危機を乗り越えようと、頑張ったりします。そして皆、家族や友人をとても大切にしています。

スイミーも、自分の仲間や居場所を守る為に、勇気をもって皆を鼓舞し、知恵を出し、皆の中で自分だけ黒いという個性を最大限に生かして大きな魚に立ち向かっていくのです。
大きな海の中の小さな生き物達の世界のお話を、繰り返し手に取りながら、やがて、自分の世界に置き換えてみたりして、色々な事を感じたり、学んだり、勇気をもらったりしながら、創造力が育っていくのではないでしょうか。
小さな子ども達の大きな成長の傍に、置いておきたい絵本です。

 

絵本「パンどろぼう」

絵本「パンどろぼう」

KADOKAWA

柴田ケイコ

絵本「パンどろぼう」受賞情報 : 柴田ケイコ イラストレーション

パンどろぼうのキャラクターが大人気なのか、近くのモールの雑貨店などで最近よく見かけます。
6歳になる孫も「かわいい~」と言って手に取っていたので「パンどろぼうのお話知ってるの?」と、聞いたら「学校にあるよ、読んだことないけどね」とのお返事。

2020年に初版のこの絵本の事は、発売された年に、その頃勤務していたこども園で、隣のクラスの発表会の題材になったので知ってはいましたが、ちゃんと読んだことはありませんでした。

本屋でも、いつも一番目立つ場所に置かれているので「人気なんだなぁ」と、思ってましたが、何故か購入に至らず…
でも、孫がキャラクターグッズに興味をもっていたので、購入し、一緒に読んでみました。読み聞かせもしているので、古い本ばかりではなく、新しい今の子に人気の絵本も手に取ってみなくちゃとも、思ったのです。

面白いお話ですが、なんといっても、パンどろぼうのキャラクターと、その目つきが個性的。ばれないようにパンをかぶって変装し、そこから見える目が、悪そうな目をしています。でも、おいしそう♡
描かれているパンがふんわりと、焦げ目もいい感じで本当に美味しそうなのです。調べてみたら、画材は、オイルパステルと、アクリル絵の具を使って、描いていらっしゃるそうで、おいしそうな焼き具合のパンの色にこだわっておられるみたいです。

孫娘も、盗みに入ったパン屋さんのページを食い入るように見ていました。
そして、おきまりの「ばぁばは、どのパンがいい?」と、どれがいい選びに突入しました。
めちゃめちゃ美味しそうなパンを盗み、家に帰って食べてみたら「まずい」と、げんなりするパンどろぼう。意外な展開とパンどろぼうの表情がおかしく、笑っちゃいます。
そして、盗みに入ったのに盗んだパンがまずく、逆ギレするパンどろぼうに対して、パンのような髪の毛をしたパン屋さんのご主人は、とても優しくおおらかで癒されます。

孫娘は、読み終えた後、パン屋さんのページをしばらくジッと見ていました。で、ひと言「このパン屋さんの建物、可愛いね、こんなお店いいなぁ」と。

パンどろぼうの家もパングッズであふれていて、とても可愛いです。
子どもにとっては、かわいいパン屋さんの雰囲気や、見た目も面白くて美味しそうなバラエティーに富んだパンのページを開くのは、楽しいのでしょう。
子どもが見たくなるページがあって、何度も繰り返し見たり、読んだりしているだけで、その絵本は、名作絵本なんだと思います。
秋になり、小学校の読み聞かせに持っていくのが楽しみになりました。

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絵本「かわ」

「かわ」
福音館書店
加古里子 作/絵

就学前に読むべし!かこさとしさんの川や海の絵本図鑑がおすすめの理由

「かわ」は、1962年に初版された絵本です。作者は、2018年に92歳で亡くなられた絵本作家 加古里子さんです。
この方は、色々な肩書をお持ちの方で、化学技術者でもいらっしゃいます。他にも大学の講師をされていたり、児童文化の研究をされていたりと、その豊かな知識は、たくさんの作品に生かされているように思います。

「たかい やまに つもった ゆきがとけて ながれます。やまにふった あめも ながれます。みんな あつまってきて、ちいさいながれを つくります。」
お話のはじまりです。
小さな流れは、山の湧水等と一緒になり、岩にぶつかり、滝になって落ち、谷川となって山を下ります。
ダムにせき止められたり、木々を運んだりして、少しづつ人間の暮らしに関わりながら険しいがけの間をしぶきをあげながら流れ出ていき、その間に大きな岩も、激しい水の勢いで削られ、だんだん丸くなり、押し流されてぶつかり合って、小さな石ころになっていきます。
その様子は細かく絵本の隅々まで描かれいて、次のページにずっと繋がっていきます。
例えば、山で切り出された木々が川で運ばれ、森林起動で更に運ばれてどうなっていくのかを、ページをこえて描かれています。

ページをめくる度に かわ は大きく広くなっていきますが、ずっとつながっていて、様々な仕事や生活等に かわ が深く関わっている暮らしが細部まで、丁寧に描かれています。

もう 60年以上も前に作られた絵本なので、人々の生活の様子は現代とは違っていますが、少し前の時代まで、この様な生活もあったのだなぁと、面白く、見入ってしまいます。
本当に細かくて「せんたくしてる」「あ、竹馬乗ってるひとがいる」「釣りをしてるね」「これは、何してるの?」等々…見ていると、とても面白いんです。
また、かわ を利用しての仕事も様々描かれていて、その仕事の内容や、使われている機械や建物、場所の名前なども、小さな文字で書かれていて「へ~」ってちょっとお勉強になったりします。

かわ はそこから先もどんどん流れ、街へ流れ出ていき、そこでは、直接川の水を使って、生活したり、遊んだりする事はなくなっていきますが、浄水場に取り込まれ、ここできれいにされて、私たちのところまで運ばれてきたり、山奥の発電所から高圧線で送られてきた電気が変電所につながり、ここから私たちの家や、工場などに運ばれてくることも、ちゃんと描かれています。

いつも当たり前のように、水道からでてくる水、スイッチを入れるとパッと明るく照らしてくれる電気等は、流れている かわ の恵みである事、
私たちの生活は、自然と無関係ではなく、むしろ自然がおろそかにされたら、成り立っていけない事、そんな当たり前のことを思い出させてくれます。

川は、山奥で滝となって下って来た時とは様変わりしてゆったりと流れ、海へとつながります。
 最後の真っ青な海の絵と、「うみを こえて いこう。ひろいせかいへ」
という言葉は、この広くて深く大きな自然を尊く思う作者の気持ちと、子ども達に、広い うみ のように大きな希望をもって成長し、飛び立っていってほしいという願いが込められているように感じます。 

最後に…この絵本を紹介するにあたり、初版の情報等を調べていたら、
「こどものとも」創刊60周年を記念して ロングセラーである「かわ」を絵巻じたてにして出版されていることを知りました。
折りたたまれたページをひろげると約7メートル、源流から海までの川の旅が一望できるみたいです。私も是非、見てみたいと思いました。

エマのしごと - 中古絵本と、絵本やかわいい古本屋 -secondhand books online-

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絵本「まめうしのあついなつ」

めうしのあついなつ」

PHP研究所
あきやま ただし 作・絵

まめうしのあついなつ | あきやま ただし | 絵本ナビ:レビュー・通販

今年も毎日暑い日が続いています。私が子どもだった昭和40年代と比べると、平均気温も2~3度
高くなっているでしょうか…いや もっとかな…
ここ数年の夏の暑さは、健康を害する程で、子どもにも気を使いますね。
でも、虫捕りや水遊び、プール、泥んこ遊び等、夏ならではの遊びを楽しんでほしいものです。

今回 取り上げた「まめうしのあついなつ」という絵本は、私の大大大大好きな「まめうしくん」シリーズの絵本で、まめうしくらいの小さな こうし のまめうしが繰り広げる 楽しい日常と、小さな事件を描いています。
四季を感じられるお話が数々、出版されていますが、これは、夏のお話。 
カブトムシ みたいな ぶた の 「かぶたむし」と、
クワガタムシ みたいな うし の「くわがたうし」
困っている虫や友達を助けながら、二人で思いきり楽しんで過ごす暑い夏の一日が描かれています。

入道雲がもくもくしている夏の暑い日にお散歩してる、まめうしくんは、もう暑くて暑くてパタッと倒れてしまいます。そこへ、かぶたむしが現れ、まめうしくんに水を ばっしゃーん! とかけてくれて、まめうしくんは元気になり、がぜん、助けてくれた かぶたむし に興味を持ちます。
その後も、かぶたむし なるヒーローは、困っている あり や、いもむし や、小さな可愛いお友達の ありすちゃんたちを助けていくのですが、その途中、一人ではなかなか上手くいかない時に、
もう一人のヒーロー、くわがたうし が参上します。

二人で困っている友達を助ける途中、危ない目にも合いながら、協力したり知恵を出し合ったりしながら解決していく様子が、あきやまただしさんの絵も相まって、「プッ」と笑えるシーンばかりですが、ヒーローになりきって真剣に目の前の出来事に向き合い、思いっきり夏の暑い一日を楽しんで過ごし、夕方、お母さんの元に帰ると、すぐに「ぐ~ぐ~ す~す~」眠り、次の日の朝、また、昨日の続きをして遊ぼうとする二人を見ていると「子どもってこうじゃなくっちゃ」って思います。

何とも言えない面白い まめうしくん の世界。いつも、クスッと笑える中に、ちょっとじ~んとしたり、様々な愛情を感じたりして、いい気持ちにしてくれる絵本です。

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絵本「おふろだいすき」

「おふろだいすき」

福音館書店
松岡享子・作
林 明子・絵

おふろだいすき | 子育て絵本アドバイス

この絵本を読むと、子ども達の世界はなんて想像力に溢れているんだろうと、自分の子どもの頃に思いを馳せてみたくなります。
お風呂も、ご飯も 一日の生活全て子どもにとっては、遊びや空想や楽しみの世界であるということを思い出させてくれるのです。
大人はいつの時代も忙しく、日々を回すのに精一杯。子どもは 叱られたり、せかされたりする中で、空想の世界に浸りながら一日のルーティーンを楽しむ生き物なんだなぁと、改めて思います。

まこちゃんはおふろが大好き。いつもあひるのプッカをつれていきます。お風呂の蓋を開けてゆげがいっぱいになったところから、まこちゃんの空想の世界のはじまりです。

かめ、ペンギン、オットセイ、かば、くじら たちとの楽しい時間が始まるのです。黄色主体の絵の中に、虹色のシャボンや湯気や、いかにもあたたかそうな たっぷりのお湯が描かれ、くじらが登場する時にはお風呂は、プールみたいに大きくなっています。

動物達とまこちゃんとのやりとりや、ペンギンのわんぱくぶりや、物言わぬオットセイがシャボン玉で楽しませてくれたり、かばの体を洗ってあげたり、泡だらけのみんなを、「よっしゃー!」て感じで くじらがシャワーをかけてくれたりと、それぞれの動物達が、いかにも と、特徴的で楽しさが伝わります。
私も子どもの頃に、この絵本を読みたかったなぁと、思ったものです。

50まで数えて出るところは、我が家と一緒だなぁ、とか、この絵本が大好きだった子ども達と、お風呂に入って出た時に「きゅっ、きゅっ、きゅ、しっかりふいて、ぽん、ぽん、ぽん」と、よく真似をして体を拭いていたなぁとか、思い出します。

しなくてはならない事を、ルーティーンのように回す中で、今、この時を楽しんでいる子どもって、最強ですね。大人の10分は、体内時計で子どもは何倍に膨らんでいるのでしょう。誰にも邪魔されない子どもの空想の世界は、子どもだけのものです。



少し長めのお話なので、学校等の読み聞かせではちょっと勇気がいりそうです。でも、それぞれの動物たちの特徴を捉えたセリフを楽しみながら、読んでいくと楽しんで読めそうですし、やっぱり、最後はお母さんが登場して、安心して終われそうなところも、幼い子ども達の楽しめそうなポイントです。

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