絵本「ねないこ だれだ」

「ねないこ だれだ」
福音館書店
せな けいこ  さく・え

想造舎 | 子ども劇場 | 幼児のための音楽影絵 こわくてなくぞ「ねないこだれだ」影絵音楽団くぷくぷ | インドネシアのガムランとワヤン・クリ

「とけいが なります ボン ボン ボン…… こんなじかんに おきているのは だれだ?  ふくろうに みみずく くろねこ どらねこ……
いえいえ よなかは おばけの じかん」
そうやって始まる小さなサイズのこの絵本は、有名な絵本作家 せなけいこさんの
「いやだいやだのえほん」シリーズのうちの一冊です。

夜遅くまでおきていると、表紙に描かれている「おばけ」が子どもをさらいにきて、空の彼方のおばけの世界へ連れていかれてしまう。という、ちょっと怖い、短いお話。

絵はすべて「ちぎり絵」で表現され、夜を表現した暗いバックに、ちぎり絵の真っ白いおばけや、ねこ等が印象的に描かれています。
作家のせなけいこさんの「せなけいこ展」へ、いつだったか行ってきましたが、お寿司の折詰めに使われている包装紙ののような小さな包み紙でさえも大切に保管して、絵本製作や挿絵等に使われていたことを知りました。
確かに、包装紙って、素敵な模様や色合いがたくさんありますよね、昔は、今よりももっと凝っていたような気がしますし、大人になり、そういう裏話を知って絵本を開くと、新たな楽しみ方が生まれます。

前述のように、ラストは少し怖いのですが、この「怖い」という感情は、どの様なものでしょう。おばけや暗いところを怖がるというのは、生まれ持った気質により、個人差が大きいと思われますが、子どもが「怖い」と明確に感じられるようになるのは、だいたい3歳頃からと言われています。
生まれてから様々な経験をし、言葉を覚えた子どもは、想像力や見通しを持つ力が身につき、暗い=怖い、おばけ=得体のしれない怖いもの、といった知識が植え付けられていくのでしょう。
それは、成長なのですが、あんまり怖がりがひどいと、怖がらせるのも良くないかなぁと思ってしまいますよね。
夜、おばけの絵本を読んで、ちょっと怖い気持ちを抱かせながら眠る…なんていいのかなぁと…
でも、暗い夜に、寝ないと連れてかれちゃうって、お母さんやお父さんにしがみついて安心して眠る事で、愛情を感じ、自己肯定感が育ち、感受性が豊かになっていくような気がします。
更には、心が育つことで、反対の感情である、「笑い」「喜び」の感情が育っていく大切な要素も、そこにはあるような気がします。

また、夜遅くまで起きていたがる子どものしつけの為の絵本かと思いがちですが、せなけいこさんは、しつけの為に描いた絵本ではなく、子ども達が怖いけど見たがる、怖いけど可愛い、子どもがお友達になれるおばけを描いてみようという気持ちで絵本を作ったと、何かで読みました。

1969年11月初版で、半世紀ほど経ちます。
作者のせなけいこさんは、2024年10月23日、老衰のため亡くなられた事が報じられましたが、自身の子育ての経験を基に発想した、独自の世界観と、ストーリーは、これからも沢山の子ども達に愛され読み継がれていくことでしょう。

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絵本「コーギビルの村まつり」

「コーギビルの村まつり」

メディアファクトリー

ターシャ・チューダー/絵・文
食野雅子/訳

コーギビルの村まつり | 子育て絵本アドバイス

アメリカの小さな町や村の最大のイベントは、おまつり。この絵本の舞台であるコーギビル村もそうでした。
この物語は、クリスマスの次に楽しい 村まつりのお話で、主人公はコーギー犬のケイレブです。他にも、犬、猫、ウサギ、ニワトリ、カラスが登場します。そして、忘れてはいけないのが、ボガートという妖精です。
妖精というと、可愛らしい姿を想像しますが、この絵本に出てくる妖精は、どちらかというとトロルのようです。でも、このボガートが、結構キーパーソンで、この絵本を面白くしてくれています。

コーギビルの村まつりの最大のイベントは、ヤギのグランドレース。ケイレブは、このレースに向けて、ヤギのジョセフィーンを何カ月もかけて調教したり、体重管理をしたりしてきました。また、ヤギの事に詳しい、ボガートのマートのところへ足しげく通い、色々アドバイスも受けていました。
でも、優勝を狙う、ずる賢い猫のエドガー・トムキャットが、汚い手を使って、ケイレブの邪魔をしようとしていて…という展開。

お話は、場面場面ごとに細やかな描写で描かれているし、主要人物、例えばケイレブの家族一人一人の性格や暮らしぶりや、お祭りに向けてどんな風にこの一年を過ごしてきたか等もほのぼのと、丁寧に描かれているので、お話はその分長くなるのですが、だからこそ、絵本の世界に入り込み、感情移入できるような気がします。

また、宿敵トムキャットについても、あまり村で評判が良くない理由も早い段階で触れています。
様々な人物の感情が絡み合い、おまつりに向けてお話が進んでいき、そして、9月になり、収穫の時期になってくる頃には、準備も最終段階に入る様子が念入りに描かれます。そして、お祭り当日の一日の流れや、ヤギレースへの不穏な流れも分刻みで描かれ、スピード感が増し、ワクワク ハラハラ ドキドキの展開に、読者は、お話の世界に引きずり込まれていきます。
一年間、おまつりを楽しみに日々の生活を頑張る村の人々や、育てた農作物や生き物への愛情など、これこそが本当に子育てに大切なものなのではないかと、思い出させてくれるお話を、久しぶりに手に取ってみて、忙しすぎる今の世の中、こんな風に暮らしてみたいな、いや、でもやっぱり大変だよなぁなーんて、ちょっと考えてしまいました。



とても、読みごたえのある一冊ですが、なんといっても、絵が素晴しく、何と表現したら伝わるのかわかりません。
お店屋さんひとつとっても、隅々まで丁寧に描かれていて、家具、雑貨や食べ物に至るまで全てこだわりをもって描かれています。

主人公のケイレブは作者である ターシャの愛犬、また、出てくる動物たちは、すべて、ターシャが飼っている動物たちがモデルだと思われるので、絵の中の生き物たちへの作者の愛情が伝わってきます。
動物好き、特にコーギー犬好きには、たまらない絵本だと思います。

作者のターシャ・チューダーは、アメリカの絵本画家、挿絵画家、人形作家、園芸家です。
ターシャが1971年 57歳の頃に、ニューイングランド地方 バーモント州南部の小さな町で、30万坪の広大な土地に「コーギーコテージ」と言われる家を建て、庭を作り、スローライフな生活を営み始めます。
一日の大半を草花の手入れに費やし、着るものやエプロンを手作りし、山羊の乳を絞り、庭でとれた果実でジャムを作り、パイを焼いたりして暮らしていたそうです。

「コーギビルの村まつり」は、いつ描かれていたのか詳しい事はわかりませんが、ちょうどターシャが生活を変化させた頃に、刊行されています。
日本での出版は、それよりも20年程後のことになりますので、私はその頃購入して、子ども達に読んであげていました。
子ども達、特に長男は このお話が大好きで、何度も何度も読み聞かせをしましたが、長いので、私の方が先に寝落ちしてしまう事も度々あったと記憶しています。

ターシャ・チューダーについては、沢山の書籍や、また、テレビなどで紹介されています。その暮らしぶりや、どうして、その様な生活を営むに至ったか等、文章では伝えきれないので、是非、物語の中のような暮らしぶりを、書籍や映像で のぞいて見て頂ければと、思います。

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