絵本「おべんとうバス」

「おべんとうバス」

ひさかたチャイルド
真珠 まりこ 作・絵

おべんとうバス | 真珠 まりこ,真珠 まりこ | 絵本ナビ:レビュー・通販

2006年に発行された 比較的新しいこの絵本には、保育士時代 本当に本当にお世話になりました。といっても、若い頃ではなく もう後半戦ですけど💦

まだ誰も乗っていない真っ赤なかわいい バス。
「バスにのってくださーい」 そして、次々にお名前が呼ばれます。  呼ばれるのは、お弁当のおかずでおなじみの ハンバーグやエビフライ、たまごやき達 (≧▽≦) 
緑のお野菜や、デザートの果物もみんな一緒にバスに乗り込んで さあ、出発です!

原色で描かれた鮮やかなキャラクター達が、本当に可愛らしく、また、リズミカルに繰り返される会話の文面が、小さな子ども達にピッタリです。
「ハンバーグさーん」
「はーい」
という声に合わせて、小さなおててを上げてくれる 微笑ましい光景が浮かびます。

保育士小道具の一つとして、ペープサートというものがあるのですが、私はこの絵本を題材にペープサートを作り、親子遠足のバスの中などで、毎年見せていました。
絵も色合いも作りやすい題材なもので、大いにお世話になったものです。
コロナ渦以降、遠足や園外保育など、下火になり、子ども達も戸外でお弁当を食べたり、バスに乗って、お友達と出かける事も少なくなり、少し残念な気もしますね。

「おべんとうバス」は、歌も作られていて、お話を歌にして読んでいくこともできます。とっても楽しい歌なので、YouTubeなどで検索してみると、また更に楽しむことができそうです。

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絵本「バムとケロのさむいあさ」

「バムとケロのさむいあさ」

文渓堂
島田 ゆか

絵本『バムとケロのさむいあさ』の内容紹介(あらすじ) - 島田ゆか | 絵本屋ピクトブック

「バムとケロのにちようび」「バムとケロのそらのたび」に続く、バムケロシリーズの三作目が「バムとケロのさむいあさ」です。
しっかり者で優しくおおらかなバムと、子どもらしく毎日を全力で楽しんでいる 散らかしやのケロちゃん そんな二人の日常の一コマを描いている絵本です。

ある冬の寒い日、バムとケロは家の裏にある池が凍っているはずと、スケート遊びやつりの準備をして出かけていくと、あひるのかいちゃんが池の水と一緒に凍り付いてしまっていました。たいへんたいへんと、二人はかいちゃんを助け、家に連れて帰り、お風呂に入れて暖めてあげてから、遊んだり、一緒におやつを食べたりして過ごすのですが、テンションの上がったケロちゃんが…とまあ、大変な事になってしまいます。そして、ラストにはもっと衝撃的な事件が待ち受けています(笑)


あひるのかいちゃんが、池で凍り付いてしまうまで、何をしていたかも気になりますよね、それも表表紙と裏表紙の見返しページを見ると「あ、そうだったんだ~」と、納得。
そんな細やかな絵による表現もとっても楽しいです。



私は、バムケロシリーズの中でも、この絵本が一番印象に残っているので、1作目
を抜かしてこの絵本を取り上げてみました。
印象に残っているのは、私が保育士時代にこの絵本をとても好きだったお子さんがいて、ケロちゃんがしでかしたトイレットペーパーミイラごっこを再現して遊んだ思い出があるからです。やってみたいというその子の思いを、よく当時の園長先生も許してくれたなぁと、思います。みんなで、園の机の脚や椅子、人形など巻き巻きして遊んで楽しかったことでしょう。遊んだペーパーは使えるものは再度汚れ拭きに使い、汚れたものは紙粘土遊びをして、消費しました💦 楽しい思い出です。



幸せを感じる平和な日常を綴ったストーリーも魅力的ですが、絵本の中に丁寧に描き込まれた風景や家のインテリアや雑貨等の小物類が北欧の景色や家具のように鮮やかな色使いで印象的。一度見たら忘れられない絵だと思います。
さらに絵の隅々までよーく見ていると、小さな子たちがいて、ページをめくるたびに、この子達を探すのも楽しめます。この子達にもちゃんと名前があったような気がしますが、私は忘れてしまいました。
出てくる食べ物も、とても美味しそうで、この小さな子たちにも、小さな家具や食器でちゃんと提供されていて、探すのも楽しくなり、大人でも夢中なってしまいそうだし、他にも、表紙の絵と裏表紙にもつながりがあって、最後の最後まで楽しさが続きます。
シリーズを通して読んでいくと、さらに発見が増えていくような気がします。


細部まで丁寧に描かれた絵と、全編にあふれる優しさと思いやりに心が温まる素敵な絵本です。

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絵本「コーギビルの村まつり」

「コーギビルの村まつり」

メディアファクトリー

ターシャ・チューダー/絵・文
食野雅子/訳

コーギビルの村まつり | 子育て絵本アドバイス

アメリカの小さな町や村の最大のイベントは、おまつり。この絵本の舞台であるコーギビル村もそうでした。
この物語は、クリスマスの次に楽しい 村まつりのお話で、主人公はコーギー犬のケイレブです。他にも、犬、猫、ウサギ、ニワトリ、カラスが登場します。そして、忘れてはいけないのが、ボガートという妖精です。
妖精というと、可愛らしい姿を想像しますが、この絵本に出てくる妖精は、どちらかというとトロルのようです。でも、このボガートが、結構キーパーソンで、この絵本を面白くしてくれています。

コーギビルの村まつりの最大のイベントは、ヤギのグランドレース。ケイレブは、このレースに向けて、ヤギのジョセフィーンを何カ月もかけて調教したり、体重管理をしたりしてきました。また、ヤギの事に詳しい、ボガートのマートのところへ足しげく通い、色々アドバイスも受けていました。
でも、優勝を狙う、ずる賢い猫のエドガー・トムキャットが、汚い手を使って、ケイレブの邪魔をしようとしていて…という展開。

お話は、場面場面ごとに細やかな描写で描かれているし、主要人物、例えばケイレブの家族一人一人の性格や暮らしぶりや、お祭りに向けてどんな風にこの一年を過ごしてきたか等もほのぼのと、丁寧に描かれているので、お話はその分長くなるのですが、だからこそ、絵本の世界に入り込み、感情移入できるような気がします。

また、宿敵トムキャットについても、あまり村で評判が良くない理由も早い段階で触れています。
様々な人物の感情が絡み合い、おまつりに向けてお話が進んでいき、そして、9月になり、収穫の時期になってくる頃には、準備も最終段階に入る様子が念入りに描かれます。そして、お祭り当日の一日の流れや、ヤギレースへの不穏な流れも分刻みで描かれ、スピード感が増し、ワクワク ハラハラ ドキドキの展開に、読者は、お話の世界に引きずり込まれていきます。
一年間、おまつりを楽しみに日々の生活を頑張る村の人々や、育てた農作物や生き物への愛情など、これこそが本当に子育てに大切なものなのではないかと、思い出させてくれるお話を、久しぶりに手に取ってみて、忙しすぎる今の世の中、こんな風に暮らしてみたいな、いや、でもやっぱり大変だよなぁなーんて、ちょっと考えてしまいました。



とても、読みごたえのある一冊ですが、なんといっても、絵が素晴しく、何と表現したら伝わるのかわかりません。
お店屋さんひとつとっても、隅々まで丁寧に描かれていて、家具、雑貨や食べ物に至るまで全てこだわりをもって描かれています。

主人公のケイレブは作者である ターシャの愛犬、また、出てくる動物たちは、すべて、ターシャが飼っている動物たちがモデルだと思われるので、絵の中の生き物たちへの作者の愛情が伝わってきます。
動物好き、特にコーギー犬好きには、たまらない絵本だと思います。

作者のターシャ・チューダーは、アメリカの絵本画家、挿絵画家、人形作家、園芸家です。
ターシャが1971年 57歳の頃に、ニューイングランド地方 バーモント州南部の小さな町で、30万坪の広大な土地に「コーギーコテージ」と言われる家を建て、庭を作り、スローライフな生活を営み始めます。
一日の大半を草花の手入れに費やし、着るものやエプロンを手作りし、山羊の乳を絞り、庭でとれた果実でジャムを作り、パイを焼いたりして暮らしていたそうです。

「コーギビルの村まつり」は、いつ描かれていたのか詳しい事はわかりませんが、ちょうどターシャが生活を変化させた頃に、刊行されています。
日本での出版は、それよりも20年程後のことになりますので、私はその頃購入して、子ども達に読んであげていました。
子ども達、特に長男は このお話が大好きで、何度も何度も読み聞かせをしましたが、長いので、私の方が先に寝落ちしてしまう事も度々あったと記憶しています。

ターシャ・チューダーについては、沢山の書籍や、また、テレビなどで紹介されています。その暮らしぶりや、どうして、その様な生活を営むに至ったか等、文章では伝えきれないので、是非、物語の中のような暮らしぶりを、書籍や映像で のぞいて見て頂ければと、思います。

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絵本「パンどろぼう」

絵本「パンどろぼう」

KADOKAWA

柴田ケイコ

絵本「パンどろぼう」受賞情報 : 柴田ケイコ イラストレーション

パンどろぼうのキャラクターが大人気なのか、近くのモールの雑貨店などで最近よく見かけます。
6歳になる孫も「かわいい~」と言って手に取っていたので「パンどろぼうのお話知ってるの?」と、聞いたら「学校にあるよ、読んだことないけどね」とのお返事。

2020年に初版のこの絵本の事は、発売された年に、その頃勤務していたこども園で、隣のクラスの発表会の題材になったので知ってはいましたが、ちゃんと読んだことはありませんでした。

本屋でも、いつも一番目立つ場所に置かれているので「人気なんだなぁ」と、思ってましたが、何故か購入に至らず…
でも、孫がキャラクターグッズに興味をもっていたので、購入し、一緒に読んでみました。読み聞かせもしているので、古い本ばかりではなく、新しい今の子に人気の絵本も手に取ってみなくちゃとも、思ったのです。

面白いお話ですが、なんといっても、パンどろぼうのキャラクターと、その目つきが個性的。ばれないようにパンをかぶって変装し、そこから見える目が、悪そうな目をしています。でも、おいしそう♡
描かれているパンがふんわりと、焦げ目もいい感じで本当に美味しそうなのです。調べてみたら、画材は、オイルパステルと、アクリル絵の具を使って、描いていらっしゃるそうで、おいしそうな焼き具合のパンの色にこだわっておられるみたいです。

孫娘も、盗みに入ったパン屋さんのページを食い入るように見ていました。
そして、おきまりの「ばぁばは、どのパンがいい?」と、どれがいい選びに突入しました。
めちゃめちゃ美味しそうなパンを盗み、家に帰って食べてみたら「まずい」と、げんなりするパンどろぼう。意外な展開とパンどろぼうの表情がおかしく、笑っちゃいます。
そして、盗みに入ったのに盗んだパンがまずく、逆ギレするパンどろぼうに対して、パンのような髪の毛をしたパン屋さんのご主人は、とても優しくおおらかで癒されます。

孫娘は、読み終えた後、パン屋さんのページをしばらくジッと見ていました。で、ひと言「このパン屋さんの建物、可愛いね、こんなお店いいなぁ」と。

パンどろぼうの家もパングッズであふれていて、とても可愛いです。
子どもにとっては、かわいいパン屋さんの雰囲気や、見た目も面白くて美味しそうなバラエティーに富んだパンのページを開くのは、楽しいのでしょう。
子どもが見たくなるページがあって、何度も繰り返し見たり、読んだりしているだけで、その絵本は、名作絵本なんだと思います。
秋になり、小学校の読み聞かせに持っていくのが楽しみになりました。

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絵本「かわ」

「かわ」
福音館書店
加古里子 作/絵

就学前に読むべし!かこさとしさんの川や海の絵本図鑑がおすすめの理由

「かわ」は、1962年に初版された絵本です。作者は、2018年に92歳で亡くなられた絵本作家 加古里子さんです。
この方は、色々な肩書をお持ちの方で、化学技術者でもいらっしゃいます。他にも大学の講師をされていたり、児童文化の研究をされていたりと、その豊かな知識は、たくさんの作品に生かされているように思います。

「たかい やまに つもった ゆきがとけて ながれます。やまにふった あめも ながれます。みんな あつまってきて、ちいさいながれを つくります。」
お話のはじまりです。
小さな流れは、山の湧水等と一緒になり、岩にぶつかり、滝になって落ち、谷川となって山を下ります。
ダムにせき止められたり、木々を運んだりして、少しづつ人間の暮らしに関わりながら険しいがけの間をしぶきをあげながら流れ出ていき、その間に大きな岩も、激しい水の勢いで削られ、だんだん丸くなり、押し流されてぶつかり合って、小さな石ころになっていきます。
その様子は細かく絵本の隅々まで描かれいて、次のページにずっと繋がっていきます。
例えば、山で切り出された木々が川で運ばれ、森林起動で更に運ばれてどうなっていくのかを、ページをこえて描かれています。

ページをめくる度に かわ は大きく広くなっていきますが、ずっとつながっていて、様々な仕事や生活等に かわ が深く関わっている暮らしが細部まで、丁寧に描かれています。

もう 60年以上も前に作られた絵本なので、人々の生活の様子は現代とは違っていますが、少し前の時代まで、この様な生活もあったのだなぁと、面白く、見入ってしまいます。
本当に細かくて「せんたくしてる」「あ、竹馬乗ってるひとがいる」「釣りをしてるね」「これは、何してるの?」等々…見ていると、とても面白いんです。
また、かわ を利用しての仕事も様々描かれていて、その仕事の内容や、使われている機械や建物、場所の名前なども、小さな文字で書かれていて「へ~」ってちょっとお勉強になったりします。

かわ はそこから先もどんどん流れ、街へ流れ出ていき、そこでは、直接川の水を使って、生活したり、遊んだりする事はなくなっていきますが、浄水場に取り込まれ、ここできれいにされて、私たちのところまで運ばれてきたり、山奥の発電所から高圧線で送られてきた電気が変電所につながり、ここから私たちの家や、工場などに運ばれてくることも、ちゃんと描かれています。

いつも当たり前のように、水道からでてくる水、スイッチを入れるとパッと明るく照らしてくれる電気等は、流れている かわ の恵みである事、
私たちの生活は、自然と無関係ではなく、むしろ自然がおろそかにされたら、成り立っていけない事、そんな当たり前のことを思い出させてくれます。

川は、山奥で滝となって下って来た時とは様変わりしてゆったりと流れ、海へとつながります。
 最後の真っ青な海の絵と、「うみを こえて いこう。ひろいせかいへ」
という言葉は、この広くて深く大きな自然を尊く思う作者の気持ちと、子ども達に、広い うみ のように大きな希望をもって成長し、飛び立っていってほしいという願いが込められているように感じます。 

最後に…この絵本を紹介するにあたり、初版の情報等を調べていたら、
「こどものとも」創刊60周年を記念して ロングセラーである「かわ」を絵巻じたてにして出版されていることを知りました。
折りたたまれたページをひろげると約7メートル、源流から海までの川の旅が一望できるみたいです。私も是非、見てみたいと思いました。

エマのしごと - 中古絵本と、絵本やかわいい古本屋 -secondhand books online-

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絵本「トマトさん」

「トマトさん」

福音館書店
田中 清代(たなかきよ)・さく 

トマトさん | 田中 清代 | 数ページ読める | 絵本ナビ:レビュー<a href=

 

表紙に入りきらない迫力のある、マダムのような真っ赤なトマトの絵。この印象的な表紙で、なんとなくこの絵本を避けてしまう人は結構いるのかなと思います。現に私も、その一人でした。
でも、夏の暑い日に、読み聞かせする絵本を探していると「あーら、今日の読み聞かせは、わたしでいかが~~」ていう声が、聞こえてきた気がして手に取って読んでみたら、もうほんっとーに!素晴らしい絵本でした。

ジリジリと暑い真夏のある日の昼下がり、トマトさんはきから落ちます。その時の 「どった、」 という文面の表現で、このトマトさんが大きくて立派でよく熟れたトマトだという事がわかります。

トマトさんは地面に落ちてから、ますます暑くなり、暑くて暑くてたまらなくなります。そんな時、近くを流れる小川にミニトマト達が「ぽちゃん」と、飛び込む涼しそうな音が聞こえてきます。うらやましいトマトさんですが、体が重くて動くことができません。
でも、それを周りの虫や小動物たちに伝える事ができず、とうとう涙を流し始めます。そして…

最後には、もちろん、トマトさんも小川に飛び込む事ができるのですが、そこに至るまでの心の動きや、周りにいる様々な生き物の優しさ、楽しさや気持ちよさを共有する心地良さは、子ども達の人間関係にも反映して、とても心が温まります。
また、いかにも暑苦しそうなトマトさんが、水に飛び込んだ時の様子と、更に水浴びの後に、岸に上がって休む最後のページが、本当に気持ちよさそうで、私の大好きなページです。
「かぜが さらさらと ふいて、みんなは すっかり すずしくなった。」
読み聞かせをしている私のところまで、心地よい風がふいてきてくれて、読み終わると、いつも清涼感で包まれるような気持ちになります。

今年も暑い夏になりそうです。暑い夏に読み終わった一瞬、涼しさを感じられるこの一冊を手に取ってみてはいかがでしょう。

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絵本「そらまめくんのベッド」

「そらまめくんのベッド」
なかや みわ さく・え

定番絵本『そらまめくんのベッド』の内容紹介(あらすじ) - なかやみわ | 絵本屋ピクトブック 

子どもが保育園児の頃に、この絵本を持ち帰って来た時がこの絵本との初めての出逢いでした。
「今月の絵本はこれだよー」みたいな感じで渡された瞬間「なんて可愛い絵なんだろう!読むのが楽しみ~」と、ワクワクしたのを覚えています。

お話は…そらまめくんの宝物のベッドを巡り、周りのお友達のおまめさんたちとちょっと気まずい雰囲気になったところへ、ハプニングが起こります。
そらまめくんは、自分のベッドを大切に思う余りに誰にも貸してあげられずにいましたが、ある日そのベッドが見当たらなくなり、慌てて探すと、なんと大事なベッドでうずらが卵を温めているではありませんか!
誰にもベッドを貸してあげられなかったそらまめくんでしたが、こうなれば仕方ありません。うずらと卵とベッドをそばで見守る事にしましたが…というお話。

私は、このお話を子どもに読み聞かせながら「いいじゃん、自分の大切なものを無理やり貸さなくても…大切なんだもん、貸せないよ」と、思いました。
でも、そらまめくんは、思いがけず「しかたないなぁ」と、貸す事になってしまいます。

自分の気持ちに折り合いをつけて、しかたないなぁと、貸してあげる。
本当は貸したくないけど、ちょっとくらいいいか…と、貸してあげることによって、その気持ちより倍以上の喜びが帰ってくることを、小さな子どもが体感する事で、初めて、周りの環境や人とのつながりを感じ、社会性が育っていくんだなぁと、保育の現場にいる時、特に2歳児を担任していた頃に感じました。こんなことがありました。

2歳児の担任の終わりごろ、遊具を独り占めして遊んでいた女の子に、別の女の子が先生と一緒に「かーしーて!」と、近づきました。その子はお気に入りのその遊具をギュッと握りしめ、どうにも貸せない表情でしたが、何度も繰り返し言われるうちに ふっと表情が柔らかくなり、
「しかたないなぁ」という感じで貸してあげたのです。周りにいて、ことの成り行きを見守っていた保育士は、みんなでその女の子を手をたたいて褒めちぎりました。
もうすぐ3歳という年齢では、気に入って遊んでいるものを他者に貸すのは大変なことです。それをみんなわかっているから無理強いもしないし、待ってみたりするのですが、その日はなんとか、貸してあげることができたので、本当に偉かったのです。
そして、褒められた女の子は、下を向いて嬉しそうにニッコリしていました。その後は、先生が仲立ちをして、短い時間でしたが、貸し借りをしながら遊ぶ二人の姿がありました。
子どもが、一人遊びの世界から、一歩成長していく瞬間を見れた気がして嬉しかった事を今でも覚えています。「しかたないなぁ」と、自分の気持ちに折り合いをつける、人間関係においてとても大切な事かなと、私は思います。

 一人で遊ぶ楽しさ、友達と関わったり、おしゃべりしたりしながら遊ぶ楽しさ。どちらも違った楽しさがあると思いますが、誰ともかかわらずに生きていける人はいません。
そらまめくんも、思いがけない体験から、周りの友達と一緒に過ごしたり遊んだり、喜びを分かち合ったり、困った時に助け合ったりする楽しさや満足感や心強さを経験できて、それがとっても嬉しく楽しいものとなったことで、一歩成長していけた…そんな温かい、可愛いお話です。

そして、この絵本を読んだら、ぜひ、本物のそら豆のさやを手に入れて、見せてあげてほしいなぁと、思ってしまいます。本当にフワフワで、子どもが見たらすぐ、そらまめくんの世界へビューンと飛んで行ってしまいそうです。そのくらい、可愛い絵が魅力的な絵本です。

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絵本「くつくつあるけ」のほん

「おつきさまこんばんは」
「くつくつあるけ」
「きゅっきゅっきゅっ」
「おててがでたよ」
福音館書店
林 明子 さく

おつきさまこんばんは 福音館あかちゃんの絵本 : 林明子 | HMV&BOOKS online - 9784834006872

大好きな「林明子」さんの絵本、子ども達が小さな頃には何度も何度も読んだ絵本です。だけど、この「おつきさまこんばんは」以外の3冊の絵本が、見当たりません(´;ω;`)
どこにいっちゃったんでしょう。記憶がない…

「おつきさまこんばんは」は、満月の夜に、屋根の上で空を見上げている二匹の猫ちゃんがお月様に「こんばんは」というところから始まります。

生まれてから朝や昼の区別のなかった赤ちゃんが、歩き始め、少しずつ世界や視野が広がり、朝が来て明るくなり、夜が来ると暗くなる、そして眠る。そんな一日のルーティーンが少しずつ出来るようになってくる頃、空を見上げて、雲や雨や星や月に気付く時があるでしょう。
私も、そんな時、よくこの本を真似して「おつきさま こんばんは」って、子どもと一緒に言い合ったものです。子どもはもう それだけでとっても喜ぶのです。

月日は経って、孫が生まれてからも この本に親しみ おつきさまを見た時に「おつかま こんばんは」とたどたどしく言っていたのは、まだ記憶に新しい思い出であると共に、空を見上げておつきさまが笑っていてくれるような平和な毎日こそが宝物だと感じます。
そして、大人になっても、遠い空のお月様を見上げて「あぁ、今日はお月様がきれいだなぁ」と気付くような感受性が豊かな子に育つ気がします。

「きゅっきゅっきゅ」「くつくつあるけ」「おててがでたよ」は、いずれもご飯を食べたり、歩き始めたり、洋服を自分で着ることに興味を持ち始めた子どもに読み聞かせるには、最適な絵本です。

食後に口元をきれいにしたり、靴を身につけるのを嫌がったり、洋服が上手く着れず癇癪を起こしたりする年齢を迎えつつある子どもを前に、時々疲れてしまっていた私は、子供と一緒にこの本を手に取り、あぁそうだ、明日はこうやって遊びながら子どもと接してみようと、思った事がありました。
自分の手や足、目や鼻や口に意識がいくようになり、自分の意思で動かせる嬉しさや、思うようにならないもどかしさを全身で表現する子どもの気持ちを、この絵本と共に、受け止め笑いに変えていきたいものです。
忙しい子育ての合間の、ちょっと心に余裕のある時に、一緒に絵本を見たり、本の中にあるように、
遊びながら、生活の中の様々な事をゆったりとしてみたら、子どもはケタケタと笑いながらしてくれるかもしれませんね。

「きゅっきゅっきゅっ」と口を拭く、「ばあ~」「あれ、おててはどこかな?」と、かくれんぼしながら衣服を着る、「くつくつあるけー」と、靴と一緒にお散歩する、きっと、楽しんで出来るよね。
そんなことを、温かい絵と共に思い出させてくれる、可愛い絵本です。

 

 

 

 

童話「ちびくろサンボ」

「ちびくろサンボ」
ワイドカラー世界の名作童話 6
原作 ヘレン・バンナーマン
文  宮川やすえ
絵  小野木 学

世界名作童話全集 10 学習版 ちびくろサンボ|中古絵本の販売|えほんポケット   ワイドカラー 世界名作童話6 ちびくろサンボ カバー無し 昭和43年1月30日発行 初版 1968年 講談社 ジャックと豆の木(名作)|売買さ ...

「ちびくろサンボ」という面白いお話は、とても有名なお話です。子どもの頃、我が家にあった
「ちびくろサンボ」の絵本はワイドカラー世界の名作童話シリーズ6「ちびくろサンボ」という絵本でしたが、古すぎて、今ではもう簡単には手に入らないと思います。私はこの本が大好きでした。
私が持っているこの古い絵本も、トラが青いズボンをはいている次のページが破れて無くなってしまっているので、子ども達に読み聞かせた時には、文章を作って読んだものです。

「ちびくろサンボ」は、もう何年も前に人種差別で問題になり、長く絶版になった時期があったかと思います。私はその経緯を詳しくは知りませんが、文の中の「くろんぼ」という呼び方がいけなかったのでしょうか…再販された瑞雲舎の「ちびくろ・さんぼ」では「ちいさな くろい おとこのこ」という表現になっています。


そんなすったもんだの歴史があるお話ですが、内容はとっても面白い童話です。
お母さんとお父さんに作ってもらったり、買ってもらったりした 洋服や傘や靴を身につけて 散歩に出かけたサンボは、ジャングルで4匹のトラに出会い、身ぐるみはがされてしまいます。
可哀想なサンボが、泣きながら歩いていると、トラたちがサンボから奪ったものを身につけて、「俺がジャングルで1番のトラだー!」と喧嘩を始めます。
最後は、喧嘩をしながら 木の周りをグルグル回って前のトラにかみついて、更にグルグル回って、黄色いバターになってしまうのです。

トラがバターになってしまう、そしてその後…最後の展開が強烈に印象的なお話で、面白すぎて一度読んだら忘れられません。
そしてこの古い絵本の トラバターが、すごーく美味しそうなのです。サンボ、お母さんのマンボ、お父さんのジャンボのキャラクター達も個性豊かに描かれていて、異国を感じながらも、親しみやすく、生き生きとお話が進んでいきます。

貴重な子ども時代に、こんな風に心から楽しい、面白いと思える絵本や童話に出逢える喜びを、沢山の子ども達に味わってほしいと思います。

 この講談社の絵本、どこかで手に入るのかな、このブログを読んで興味のある方、良かったら探してみてください。この名作童話の中には、他に「ジャックとまめの木」「ガリバー旅行記」と、字だけのお話「かべぬけせんにん」が掲載されています。どのお話も、本当に魅力的な素晴らしい絵本です。ちなみに裏表紙を見ると、価格は¥360ですって!

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絵本「じめんのうえと じめんのした」

「じめんのうえと じめんのした」

福音館書店
アーマ E. ウェバー ぶん・え
藤枝 澪子      訳

ソース画像を表示

木や草や花、普段食べている野菜、また、動物など、地球の陸の上と下に住んでいる様々な生き物は普段見えている地面の上と見えていない地面の下を、うまく使い分けたり役割を担ったりしなが生きています。
植物は地面の上で日光や空気を取り込み、地面の下からは水や養分を吸い上げて栄養分を作ります。
その植物を、動物が食べ、植物を食べる動物を他の動物が食べたりして栄養を得ているのです。

この絵本は、そのような自然界の生き物達の営みやつながり、また、目に見えないところでも生きていくためにふつふつと育まれている営みなどを、小さな子どもでも楽しめるように、シンプルな色使いの絵でわかりやすく教えてくれる、かがくの絵本です。
太陽や土、木や花や野菜たち、その恵みをいただく私たち人間も含めた動物や鳥や虫たち。現代の食べ物や嗜好品、また、自然を破壊して得た物で溢れた現代では、大切な食物連鎖の在り方を大人も、いま一度、考えなくてはいけないと、久しぶりにこの絵本を読んで思ってしまいました。

この地球が、環境破壊によって温暖化などの危機に扮している現代、戦争が人々の生活や命を奪っている今、自分には何ができるのか考えてみればみるほど、未来が心配になる時があります。
私の孫の孫のそのまた孫が生きる時代にも、豊かな自然が残されている美しい地球であってほしいと、願います。

「じめんのうえとじめんのした」という絵本を見て、なんだか壮大な話になってしまいましたが、この絵本を見ていたら、地球は人間だけのものではないと改めて感じたのです。
大変な時代を生きていくであろう子ども達が、ありとあらゆるものの命を尊いと思える人に成長してほしい、人間の何かを生み出していく創造力や知恵、技術等を、発展ではなく守っていく力として使うことが出来たらなと、私は思います。