絵本「トマトさん」

「トマトさん」

福音館書店
田中 清代(たなかきよ)・さく 

トマトさん | 田中 清代 | 数ページ読める | 絵本ナビ:レビュー<a href=

 

表紙に入りきらない迫力のある、マダムのような真っ赤なトマトの絵。この印象的な表紙で、なんとなくこの絵本を避けてしまう人は結構いるのかなと思います。現に私も、その一人でした。
でも、夏の暑い日に、読み聞かせする絵本を探していると「あーら、今日の読み聞かせは、わたしでいかが~~」ていう声が、聞こえてきた気がして手に取って読んでみたら、もうほんっとーに!素晴らしい絵本でした。

ジリジリと暑い真夏のある日の昼下がり、トマトさんはきから落ちます。その時の 「どった、」 という文面の表現で、このトマトさんが大きくて立派でよく熟れたトマトだという事がわかります。

トマトさんは地面に落ちてから、ますます暑くなり、暑くて暑くてたまらなくなります。そんな時、近くを流れる小川にミニトマト達が「ぽちゃん」と、飛び込む涼しそうな音が聞こえてきます。うらやましいトマトさんですが、体が重くて動くことができません。
でも、それを周りの虫や小動物たちに伝える事ができず、とうとう涙を流し始めます。そして…

最後には、もちろん、トマトさんも小川に飛び込む事ができるのですが、そこに至るまでの心の動きや、周りにいる様々な生き物の優しさ、楽しさや気持ちよさを共有する心地良さは、子ども達の人間関係にも反映して、とても心が温まります。
また、いかにも暑苦しそうなトマトさんが、水に飛び込んだ時の様子と、更に水浴びの後に、岸に上がって休む最後のページが、本当に気持ちよさそうで、私の大好きなページです。
「かぜが さらさらと ふいて、みんなは すっかり すずしくなった。」
読み聞かせをしている私のところまで、心地よい風がふいてきてくれて、読み終わると、いつも清涼感で包まれるような気持ちになります。

今年も暑い夏になりそうです。暑い夏に読み終わった一瞬、涼しさを感じられるこの一冊を手に取ってみてはいかがでしょう。

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絵本「せんたく かあちゃん」

「せんたく かあちゃん」
さとう わきこ さく・え

楽天ブックス: せんたくかあちゃん - さとうわきこ - 9784834008975 : 本

保育士をしていた頃、梅雨の晴れ間の蒸し暑い日に「洗濯遊び」なるものを、よく楽しみました。
今の時代、洗濯から乾燥まで洗濯機がしてくれるのに、洗濯遊びをすると、子ども達はどこで見たのか、両手を使ってゴシゴシと上手に洗ってくれるんですよね。

世の中がどんどん便利になって、手を使う様々な作業が減ってしまっても、洗濯をするシャボンの香り、お皿を洗うカチャカチャという音、トントンと食材を包丁で切る音と、だんだんご飯が出来上がってくる美味しいにおい等、子どもが五感を働かせて成長していく生活は、無くなってほしくないなぁと思ってしまう私です。
でもまあ、世の中、本当に便利なものがたくさんあって、感動もするんですけどね…

せんたくかあちゃんは、半端なく洗濯が大好き。毎日、うちじゅうの洗濯物を洗濯板でゴシゴシ洗っています。洗濯物だけではなく、うちじゅうの物を洗ってしまうので、かあちゃんが洗濯を始めるとみんな逃げていくのですが、結局、かあちゃんの迫力に負けてつかまり、洗われてしまいます。


すごい量の洗濯物を、かあちゃんは庭の木や向かいの森にせんたく紐をはって、干すのですが、そのページが圧巻😝です。
見開き2ページにドドーンと、洗濯物の絵が描かれていて「えっ、時計も?」
「えっ、ウインナーも洗っちゃったのー!」
と、ありとあらゆる物が洗って干されているので、このページを見るのはとても楽しいです。

その後、干されているおへそを狙ってかみなりさまが、空から降りてくるのですが、かみなりさまもかあちゃんに捕まって…どうなっちゃうかな。

とにかく、楽しく痛快で、文句なく面白いので、是非手に取って読み聞かせてほしい絵本です。
そして、暑い夏に、水遊びしながら、洗濯など手洗いしてみたらいかがでしょうか。子ども達は大喜びで洗濯物や泡遊びを楽しんでくれるはずです。


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絵本「ちいさな ヒッポ」

「ちいさなヒッポ」
偕成社
マーシャ=ブラウン さく
うちだ りさこ やく

絵本『ちいさなヒッポ』の内容紹介(あらすじ) - マーシャ=ブラウン,うちだりさこ | 絵本屋ピクトブック

かばの親子の表紙を開くと、川辺の夕暮れなのか、夕焼けに染まった、とても綺麗な見返しのページが目に飛び込んできます。
赤く染まった水面から、目と鼻と耳だけ出している かば と、飛び立つ 鶴 、そして、パピルスの茂み。
この絵本は、有名な「三びきのやぎの がらがらどん」の作者 マーシャ・ブラウンによって作られた、美しい木版画の絵本です。
植物や動物、鳥や水など、アフリカの風景が美しく力強く描かれいて、どのページを切り取っても、額に入れて飾れるくらい素敵です。

お話の主人公は、まだ幼い かば の子ども「ヒッポ」。
ヒッポは、お母さんが大好き♡ 川辺のパピルスのしげみで生まれた時から、お母さんのそばを離れたことがありません。
大きくてあたたかいお母さんのそばにいれば、ヒッポはこわいものなしでした。

そんなヒッポも、少しずつ成長し、かばのことばを覚える時がきました。生きていく上で必要で大切な言葉を覚え、練習するのです。
教えてもらった言葉を使い、出会った動物や、仲間のかばに話しかけるヒッポ。小さな かば の子の好奇心旺盛な様子が伝わってきます。しまうまや水牛等、様々な動物や自然の風景がページをめくる度に登場しますが、色使いや表情など、木版画であることに驚かされると同時に、木版画でなければこの様に表現できないでしょうと、思えます。

大きなお母さんの強さと、愛情の深さ。動物の世界で生きていく厳しさ。また、生きるために小さなかばを狙うワニ。
藍色のかばと、黒でふちどられた 黄緑色のワニと、さらに口の中の赤色が効果的で、迫力があり、故に、お母さんの子どもを守ろうとする愛情が、深く伝わってきます。

読み終わり、表表紙と裏表紙を広げると、お母さんのとヒッポの大きさの違いがよくわかって、最後の最後まで楽しめます。
また、この素晴らしい木版画の絵本を製本してある紙の質感が、とても素敵です。ざらざらはしてないですが、つるつるしてなくて、厚過ぎず、薄過ぎず、良い手触りで、何よりも木版画の素晴らしさが見る人に伝わってきます。
また、水辺のかばたちや、パピルスのしげみが涼しげで、水の冷たさが心地よくなってきた季節に読んで聞かせてあげるのに、ピッタリです。

この絵本を読んだ子ども達に、広い世界に生きる様々な生き物に興味をもってほしいし、お父さんやお母さんの深い愛情は、優しさと同時に厳しさもある事を知って安心して成長していってほしいと、感じます。

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絵本「そらまめくんのベッド」

「そらまめくんのベッド」
なかや みわ さく・え

定番絵本『そらまめくんのベッド』の内容紹介(あらすじ) - なかやみわ | 絵本屋ピクトブック 

子どもが保育園児の頃に、この絵本を持ち帰って来た時がこの絵本との初めての出逢いでした。
「今月の絵本はこれだよー」みたいな感じで渡された瞬間「なんて可愛い絵なんだろう!読むのが楽しみ~」と、ワクワクしたのを覚えています。

お話は…そらまめくんの宝物のベッドを巡り、周りのお友達のおまめさんたちとちょっと気まずい雰囲気になったところへ、ハプニングが起こります。
そらまめくんは、自分のベッドを大切に思う余りに誰にも貸してあげられずにいましたが、ある日そのベッドが見当たらなくなり、慌てて探すと、なんと大事なベッドでうずらが卵を温めているではありませんか!
誰にもベッドを貸してあげられなかったそらまめくんでしたが、こうなれば仕方ありません。うずらと卵とベッドをそばで見守る事にしましたが…というお話。

私は、このお話を子どもに読み聞かせながら「いいじゃん、自分の大切なものを無理やり貸さなくても…大切なんだもん、貸せないよ」と、思いました。
でも、そらまめくんは、思いがけず「しかたないなぁ」と、貸す事になってしまいます。

自分の気持ちに折り合いをつけて、しかたないなぁと、貸してあげる。
本当は貸したくないけど、ちょっとくらいいいか…と、貸してあげることによって、その気持ちより倍以上の喜びが帰ってくることを、小さな子どもが体感する事で、初めて、周りの環境や人とのつながりを感じ、社会性が育っていくんだなぁと、保育の現場にいる時、特に2歳児を担任していた頃に感じました。こんなことがありました。

2歳児の担任の終わりごろ、遊具を独り占めして遊んでいた女の子に、別の女の子が先生と一緒に「かーしーて!」と、近づきました。その子はお気に入りのその遊具をギュッと握りしめ、どうにも貸せない表情でしたが、何度も繰り返し言われるうちに ふっと表情が柔らかくなり、
「しかたないなぁ」という感じで貸してあげたのです。周りにいて、ことの成り行きを見守っていた保育士は、みんなでその女の子を手をたたいて褒めちぎりました。
もうすぐ3歳という年齢では、気に入って遊んでいるものを他者に貸すのは大変なことです。それをみんなわかっているから無理強いもしないし、待ってみたりするのですが、その日はなんとか、貸してあげることができたので、本当に偉かったのです。
そして、褒められた女の子は、下を向いて嬉しそうにニッコリしていました。その後は、先生が仲立ちをして、短い時間でしたが、貸し借りをしながら遊ぶ二人の姿がありました。
子どもが、一人遊びの世界から、一歩成長していく瞬間を見れた気がして嬉しかった事を今でも覚えています。「しかたないなぁ」と、自分の気持ちに折り合いをつける、人間関係においてとても大切な事かなと、私は思います。

 一人で遊ぶ楽しさ、友達と関わったり、おしゃべりしたりしながら遊ぶ楽しさ。どちらも違った楽しさがあると思いますが、誰ともかかわらずに生きていける人はいません。
そらまめくんも、思いがけない体験から、周りの友達と一緒に過ごしたり遊んだり、喜びを分かち合ったり、困った時に助け合ったりする楽しさや満足感や心強さを経験できて、それがとっても嬉しく楽しいものとなったことで、一歩成長していけた…そんな温かい、可愛いお話です。

そして、この絵本を読んだら、ぜひ、本物のそら豆のさやを手に入れて、見せてあげてほしいなぁと、思ってしまいます。本当にフワフワで、子どもが見たらすぐ、そらまめくんの世界へビューンと飛んで行ってしまいそうです。そのくらい、可愛い絵が魅力的な絵本です。

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絵本「くつくつあるけ」のほん

「おつきさまこんばんは」
「くつくつあるけ」
「きゅっきゅっきゅっ」
「おててがでたよ」
福音館書店
林 明子 さく

おつきさまこんばんは 福音館あかちゃんの絵本 : 林明子 | HMV&BOOKS online - 9784834006872

大好きな「林明子」さんの絵本、子ども達が小さな頃には何度も何度も読んだ絵本です。だけど、この「おつきさまこんばんは」以外の3冊の絵本が、見当たりません(´;ω;`)
どこにいっちゃったんでしょう。記憶がない…

「おつきさまこんばんは」は、満月の夜に、屋根の上で空を見上げている二匹の猫ちゃんがお月様に「こんばんは」というところから始まります。

生まれてから朝や昼の区別のなかった赤ちゃんが、歩き始め、少しずつ世界や視野が広がり、朝が来て明るくなり、夜が来ると暗くなる、そして眠る。そんな一日のルーティーンが少しずつ出来るようになってくる頃、空を見上げて、雲や雨や星や月に気付く時があるでしょう。
私も、そんな時、よくこの本を真似して「おつきさま こんばんは」って、子どもと一緒に言い合ったものです。子どもはもう それだけでとっても喜ぶのです。

月日は経って、孫が生まれてからも この本に親しみ おつきさまを見た時に「おつかま こんばんは」とたどたどしく言っていたのは、まだ記憶に新しい思い出であると共に、空を見上げておつきさまが笑っていてくれるような平和な毎日こそが宝物だと感じます。
そして、大人になっても、遠い空のお月様を見上げて「あぁ、今日はお月様がきれいだなぁ」と気付くような感受性が豊かな子に育つ気がします。

「きゅっきゅっきゅ」「くつくつあるけ」「おててがでたよ」は、いずれもご飯を食べたり、歩き始めたり、洋服を自分で着ることに興味を持ち始めた子どもに読み聞かせるには、最適な絵本です。

食後に口元をきれいにしたり、靴を身につけるのを嫌がったり、洋服が上手く着れず癇癪を起こしたりする年齢を迎えつつある子どもを前に、時々疲れてしまっていた私は、子供と一緒にこの本を手に取り、あぁそうだ、明日はこうやって遊びながら子どもと接してみようと、思った事がありました。
自分の手や足、目や鼻や口に意識がいくようになり、自分の意思で動かせる嬉しさや、思うようにならないもどかしさを全身で表現する子どもの気持ちを、この絵本と共に、受け止め笑いに変えていきたいものです。
忙しい子育ての合間の、ちょっと心に余裕のある時に、一緒に絵本を見たり、本の中にあるように、
遊びながら、生活の中の様々な事をゆったりとしてみたら、子どもはケタケタと笑いながらしてくれるかもしれませんね。

「きゅっきゅっきゅっ」と口を拭く、「ばあ~」「あれ、おててはどこかな?」と、かくれんぼしながら衣服を着る、「くつくつあるけー」と、靴と一緒にお散歩する、きっと、楽しんで出来るよね。
そんなことを、温かい絵と共に思い出させてくれる、可愛い絵本です。

 

 

 

 

童話「ちびくろサンボ」

「ちびくろサンボ」
ワイドカラー世界の名作童話 6
原作 ヘレン・バンナーマン
文  宮川やすえ
絵  小野木 学

世界名作童話全集 10 学習版 ちびくろサンボ|中古絵本の販売|えほんポケット   ワイドカラー 世界名作童話6 ちびくろサンボ カバー無し 昭和43年1月30日発行 初版 1968年 講談社 ジャックと豆の木(名作)|売買さ ...

「ちびくろサンボ」という面白いお話は、とても有名なお話です。子どもの頃、我が家にあった
「ちびくろサンボ」の絵本はワイドカラー世界の名作童話シリーズ6「ちびくろサンボ」という絵本でしたが、古すぎて、今ではもう簡単には手に入らないと思います。私はこの本が大好きでした。
私が持っているこの古い絵本も、トラが青いズボンをはいている次のページが破れて無くなってしまっているので、子ども達に読み聞かせた時には、文章を作って読んだものです。

「ちびくろサンボ」は、もう何年も前に人種差別で問題になり、長く絶版になった時期があったかと思います。私はその経緯を詳しくは知りませんが、文の中の「くろんぼ」という呼び方がいけなかったのでしょうか…再販された瑞雲舎の「ちびくろ・さんぼ」では「ちいさな くろい おとこのこ」という表現になっています。


そんなすったもんだの歴史があるお話ですが、内容はとっても面白い童話です。
お母さんとお父さんに作ってもらったり、買ってもらったりした 洋服や傘や靴を身につけて 散歩に出かけたサンボは、ジャングルで4匹のトラに出会い、身ぐるみはがされてしまいます。
可哀想なサンボが、泣きながら歩いていると、トラたちがサンボから奪ったものを身につけて、「俺がジャングルで1番のトラだー!」と喧嘩を始めます。
最後は、喧嘩をしながら 木の周りをグルグル回って前のトラにかみついて、更にグルグル回って、黄色いバターになってしまうのです。

トラがバターになってしまう、そしてその後…最後の展開が強烈に印象的なお話で、面白すぎて一度読んだら忘れられません。
そしてこの古い絵本の トラバターが、すごーく美味しそうなのです。サンボ、お母さんのマンボ、お父さんのジャンボのキャラクター達も個性豊かに描かれていて、異国を感じながらも、親しみやすく、生き生きとお話が進んでいきます。

貴重な子ども時代に、こんな風に心から楽しい、面白いと思える絵本や童話に出逢える喜びを、沢山の子ども達に味わってほしいと思います。

 この講談社の絵本、どこかで手に入るのかな、このブログを読んで興味のある方、良かったら探してみてください。この名作童話の中には、他に「ジャックとまめの木」「ガリバー旅行記」と、字だけのお話「かべぬけせんにん」が掲載されています。どのお話も、本当に魅力的な素晴らしい絵本です。ちなみに裏表紙を見ると、価格は¥360ですって!

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絵本「クリーナおばさんとカミナリおばさん」

クリーナおばさんカミナリおばさん
福音館書店
西内みなみ・さく
堀内誠一 ・え

クリーナおばさんとカミナリおばさん に対する画像結果

たくさんの電化製品にお世話になって日常生活を送っている私たち。私は、機械音痴というのもあって、自宅の電化製品事情は最先端ではありませんが、それでも朝は電気仕掛けで様々な電化製品が、起きる前から働いてくれています。朝、停電が起きたら洗濯も掃除も終わらないし、ご飯も炊けていないでしょう。ありがたいことです。



私は常々、そんな有難い電化製品達には、命あるものと思って接しています。暑い夏にブンブン働いている冷蔵庫、毎日の洗濯はもちろん、季節の変わり目には毛布などの大物もたくましく洗ってくれる10年選手の洗濯機、子ども達が学生だった頃のお弁当作りには、なくてはならなかった電子レンジ、他には、空気清浄機、ドライヤー、掃除機、テレビ…もう数え切れません。

この子達が壊れて、廃棄しなくてはならなくなった時には、「今までありがとう」という気持ちで いつも見送ってきました。電化製品だけではなく、長くお世話になった物も同じです。
そんな気持ちが芽生えたのは、もしかしたら子供の頃、この絵本を読んだからかもしれません。

お話は、掃除機のクリーナおばさんがせいそうトラックに乗せられてごみじまに運ばれていくところから始まります。トラックに乗っている捨てられた電化製品達は、口々に「まだ 働けるのに」と、文句を言いますが、ごみじまにガシャガシャと捨てられてしまいました。
周りには捨てられた電化製品達がたくさんいてみんなに「さけんでみても、むだだよ」と言われます。それでも、クリーナおばさんが「もういちど、どこかではたらいてみせる」と頑張っていたその時、ごみじまにカミナリが落ちて、カミナリおばさんがやってきます。
そして…  カミナリやまに連れていかれて…というお話。

このお話は、絵本「ぐるんぱのようちえん」と同じ、西内みなみさんと堀内誠一さんによって作られた絵本です。堀内誠一さんと言えば、前回紹介した「こすずめのぼうけん」と同じ画家の方ですが、全く絵のタッチが違います。「こすずめのぼうけん」は、写実的でやわらかいタッチですが、こちらは、直線的で、電気がビリビリしている感じが伝わる絵になっています。
その元気な絵と面白いストーリーの中で、インパクトのあるグイグイ系のカミナリおばさんが頼もしく、一気に読み終わってしまいます。


ごみじまのくらーい夜に、ババババ ビビビビ…とやってきて、「ほいよーっ」とクリーナおばさんに乗ってかみなりやまに連れていく展開が本当に爽快で、また、ごみじまのくらーい夜と、電気が流れてからの明るい画面が対照的、まるでクリーナおばさんの明るくなっていく気持ちに比例しているようです。


根底には、ごみ問題や使い捨ての時代へのメッセージなど、子ども達に何かを感じてもらいたいものもあるのかなと、大人は色々感じますが、単純に面白くて、たくさんの子ども達に届けたいと思える楽しい絵本です。ただ、もう大人になってしまった私は、人も、誰かの役に立ってこそ、必要とされてこそ、生きがいを感じるものではないかな、そんな大切なことが絵本を読んだ子ども達の心の中に灯ってくれるかな、と思いながら読み聞かせしています。

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絵本「こすずめのぼうけん」

「こすずめのぼうけん」
福音館書店
ルース・エインワース 作
石井桃子       訳
堀内誠一       画

こすずめのぼうけん (こどものとも傑作集) | 絵本, 本, エインズワース

4月も半ばを過ぎ、桜の花は散り新芽が勢いよく伸びています。3月には「ホーホケッケッ」と、ちょっと下手くそだったウグイスの鳴き声も「ホーホケキョ♪」って、上手になってきました。今頃は、街中に住む すずめも、子育て真っ最中ではないのかな?

今頃、日によっては、少し汗ばむ季節になると、車の運転中、バタバタと安定しない飛び方のすずめにぶつかりそうになったことがあります。また、ワンコの散歩中に電線から電線にフラフラと飛んでいくこすずめを見かけたことも何度か…そんな時、私はこの「こすずめのぼうけん」という絵本を思い出します。

きづたのつるの中にできた 巣の中に住んでいるすずめの親子。このこすずめにやわらかい茶色の羽が生え、翼をパタパタさせることができるようになると、お母さんすずめが飛び方を教え始めます。

お母さんに教えてもらった通りにして羽を動かすと、本当に空中に浮かんで飛ぶことができたこすずめは、お母さんに言われた生け垣の上までという約束を忘れて、生け垣を通り越して、広い世界へ飛んでいきます。
「ぼく、これなら、あの いしがきの てっぺんより、もっと とおくへとんでいける」
「はたけをこえて、そのさきの いけがきを こえて、そのさきのかわをこえていける。ぼく ひとりで、せかいじゅうをみてこられる」って。できなかった事ができた時、ここからはもうなんでもかんでも、できる気になっちゃいますよね。でもやっぱりまだ小さな子どもでした。
最初は楽しかったけど、羽が痛くなってしまった こすずめは休みたくなり、飛びながらみつけた からす、やまばと、ふくろう、かも、の巣を訪ねますが、鳴き声が違うので仲間じゃないねぇ、中へ入れることはできないねぇと、言われてしまいます。

みんな自分の仲間か尋ねるときに
「おまえ、かあ、かあ、かあ、って、いえるかね?」
「おまえさん、くう、くう、くうっていえますか?」
「おまえ、ほうほう、ほうほうっていえるかね?」
「おまえさん、くわっ、くわっ、くわっていえる?」鳴き声で確かめるのですが、残念な事に、こすずめは ちゅんちゅんちゅん しか言えないので、中に入れてもらえないのです。
堀内誠一さんのやわらかいタッチの優しい絵の中に、自然界の掟みたいなものがやんわりと描かれていて、お話を読み進めていくと、読んでいる私の腕まで痛くなってきそうな緊張感が伝わって、最後にお母さんに会えた時には、本当によかったなぁと、安心します。
眠る前の読み聞かせは、特にそんなお話ってなんだかとってもいい気がします。安心して眠れそうな気がしませんか?

ブログを書いていたら、私も亡くなった母の温かさを思い出して会いたくなりました。
字数が多めなので、小学校の読み聞かせでは、1、2年生くらいだと、聞いてくれるかなと最初は心配になってしまうかもしれませんが、繰り返しの文体も多く、わかりやすいストーリーなので、私も今度チャレンジしてみようかと、久々に本棚から出してきて思いました。

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童話「いやいやえん」

「いやいやえん」
福音館書店
中川李枝子 さく
大村百合子 え
子どもの本研究会 編集
いやいやえん|福音館書店

「いやいやえん」は、有名な絵本「ぐりとぐら」の作者 中川李枝子さんと山脇百合子さんの姉妹によって作られた童話です。「大村」というのは山脇さんの旧姓です。
お話は字が多く、絵は挿絵的な感じですが、イメージを膨らますのに丁度いい具合です。私もこの本が大好きで、よく母に読み聞かせてもらいました。字が多いので、お話をひとつづつ、何日かで読んでもらったのを覚えています。

お話は、「ちゅーりっぷほいくえん」「くじらとり」「ちこちゃん」「やまのこぐまちゃん」
「おおかみ」「山のぼり」「いやいやえん」の全部で7つ。
保育園での生活がお話の中心で、どのお話にも「しげる」という元気でいたずらっ子の男の子が登場し、しげるが保育園や保育園をお休みした日などに体験した様々な遊びや事件がいっぱい詰まっています。

お話を作られた頃、中川李枝子さんは保育士をされていたそうで、保育園での先生としげるのやりとりや、遊びの様子、子ども達の会話などに、保育士ならではの視線や愛情が感じられます。
また、一番最初のお話で「ちゅーりっぷほいくえん」のやくそくがでてくるのですが、それがなんとも、的を得ていて面白いし、また、そのやくそくを守らないで一日で17回も叱られる「しげる」のしたことが笑えてきます。これだけで「しげる」がどんな子どもかわかっちゃうくらい^^; 先生も叱りながら「子どもらしい」とは思っているはずです。ちがうかな…。

「くじらとり」というお話の中で年長組の男の子達が積み木で作ったりっぱな船に乗って、くじらを捕まえに冒険に出かけるお話がありますが、お話が進むうち、どんどん空想の世界へと飛んで、現実の世界と行ったり来たりしながらの面白さを感じます。どのお話もこんな風に、ワクワク感たっぷり、ユーモアたっぷりで、冒険へ行ったからこんなことができるようになったとか、失敗したから、次はしないとか、教訓的なものは一切なくて、子どもの世界の淡々とした日常の中の遊びやハプニングや、空想の面白さが台詞や題材の中にあふれています。いたずらっ子のしげるや子ども達が、先生や母親の大きな愛情の中で、本当にのびのびと子どもらしく毎日を過ごしている様子が描かれているのです。

7つも、お話が入っているので、かなりのボリューム感で、読み聞かせをするとしても、一日では読めない感じですが、保育園に通う子ども達は、身近な世界観でとても楽しめるのではと思います。
また、「やまのこぐまちゃん」や「おおかみ」で登場する赤いバケツをもったこぐまや、ブラシとタオルをもったおおかみは、「ぐりとぐら」や、「そらいろのたね」などの絵本にも、登場してるんじゃない?って、我が家の子ども達は、また違ったところでも楽しんでいました(^^♪

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絵本「じめんのうえと じめんのした」

「じめんのうえと じめんのした」

福音館書店
アーマ E. ウェバー ぶん・え
藤枝 澪子      訳

ソース画像を表示

木や草や花、普段食べている野菜、また、動物など、地球の陸の上と下に住んでいる様々な生き物は普段見えている地面の上と見えていない地面の下を、うまく使い分けたり役割を担ったりしなが生きています。
植物は地面の上で日光や空気を取り込み、地面の下からは水や養分を吸い上げて栄養分を作ります。
その植物を、動物が食べ、植物を食べる動物を他の動物が食べたりして栄養を得ているのです。

この絵本は、そのような自然界の生き物達の営みやつながり、また、目に見えないところでも生きていくためにふつふつと育まれている営みなどを、小さな子どもでも楽しめるように、シンプルな色使いの絵でわかりやすく教えてくれる、かがくの絵本です。
太陽や土、木や花や野菜たち、その恵みをいただく私たち人間も含めた動物や鳥や虫たち。現代の食べ物や嗜好品、また、自然を破壊して得た物で溢れた現代では、大切な食物連鎖の在り方を大人も、いま一度、考えなくてはいけないと、久しぶりにこの絵本を読んで思ってしまいました。

この地球が、環境破壊によって温暖化などの危機に扮している現代、戦争が人々の生活や命を奪っている今、自分には何ができるのか考えてみればみるほど、未来が心配になる時があります。
私の孫の孫のそのまた孫が生きる時代にも、豊かな自然が残されている美しい地球であってほしいと、願います。

「じめんのうえとじめんのした」という絵本を見て、なんだか壮大な話になってしまいましたが、この絵本を見ていたら、地球は人間だけのものではないと改めて感じたのです。
大変な時代を生きていくであろう子ども達が、ありとあらゆるものの命を尊いと思える人に成長してほしい、人間の何かを生み出していく創造力や知恵、技術等を、発展ではなく守っていく力として使うことが出来たらなと、私は思います。