絵本「そらまめくんのベッド」

「そらまめくんのベッド」
なかや みわ さく・え

定番絵本『そらまめくんのベッド』の内容紹介(あらすじ) - なかやみわ | 絵本屋ピクトブック 

子どもが保育園児の頃に、この絵本を持ち帰って来た時がこの絵本との初めての出逢いでした。
「今月の絵本はこれだよー」みたいな感じで渡された瞬間「なんて可愛い絵なんだろう!読むのが楽しみ~」と、ワクワクしたのを覚えています。

お話は…そらまめくんの宝物のベッドを巡り、周りのお友達のおまめさんたちとちょっと気まずい雰囲気になったところへ、ハプニングが起こります。
そらまめくんは、自分のベッドを大切に思う余りに誰にも貸してあげられずにいましたが、ある日そのベッドが見当たらなくなり、慌てて探すと、なんと大事なベッドでうずらが卵を温めているではありませんか!
誰にもベッドを貸してあげられなかったそらまめくんでしたが、こうなれば仕方ありません。うずらと卵とベッドをそばで見守る事にしましたが…というお話。

私は、このお話を子どもに読み聞かせながら「いいじゃん、自分の大切なものを無理やり貸さなくても…大切なんだもん、貸せないよ」と、思いました。
でも、そらまめくんは、思いがけず「しかたないなぁ」と、貸す事になってしまいます。

自分の気持ちに折り合いをつけて、しかたないなぁと、貸してあげる。
本当は貸したくないけど、ちょっとくらいいいか…と、貸してあげることによって、その気持ちより倍以上の喜びが帰ってくることを、小さな子どもが体感する事で、初めて、周りの環境や人とのつながりを感じ、社会性が育っていくんだなぁと、保育の現場にいる時、特に2歳児を担任していた頃に感じました。こんなことがありました。

2歳児の担任の終わりごろ、遊具を独り占めして遊んでいた女の子に、別の女の子が先生と一緒に「かーしーて!」と、近づきました。その子はお気に入りのその遊具をギュッと握りしめ、どうにも貸せない表情でしたが、何度も繰り返し言われるうちに ふっと表情が柔らかくなり、
「しかたないなぁ」という感じで貸してあげたのです。周りにいて、ことの成り行きを見守っていた保育士は、みんなでその女の子を手をたたいて褒めちぎりました。
もうすぐ3歳という年齢では、気に入って遊んでいるものを他者に貸すのは大変なことです。それをみんなわかっているから無理強いもしないし、待ってみたりするのですが、その日はなんとか、貸してあげることができたので、本当に偉かったのです。
そして、褒められた女の子は、下を向いて嬉しそうにニッコリしていました。その後は、先生が仲立ちをして、短い時間でしたが、貸し借りをしながら遊ぶ二人の姿がありました。
子どもが、一人遊びの世界から、一歩成長していく瞬間を見れた気がして嬉しかった事を今でも覚えています。「しかたないなぁ」と、自分の気持ちに折り合いをつける、人間関係においてとても大切な事かなと、私は思います。

 一人で遊ぶ楽しさ、友達と関わったり、おしゃべりしたりしながら遊ぶ楽しさ。どちらも違った楽しさがあると思いますが、誰ともかかわらずに生きていける人はいません。
そらまめくんも、思いがけない体験から、周りの友達と一緒に過ごしたり遊んだり、喜びを分かち合ったり、困った時に助け合ったりする楽しさや満足感や心強さを経験できて、それがとっても嬉しく楽しいものとなったことで、一歩成長していけた…そんな温かい、可愛いお話です。

そして、この絵本を読んだら、ぜひ、本物のそら豆のさやを手に入れて、見せてあげてほしいなぁと、思ってしまいます。本当にフワフワで、子どもが見たらすぐ、そらまめくんの世界へビューンと飛んで行ってしまいそうです。そのくらい、可愛い絵が魅力的な絵本です。

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絵本「はなのすきなうし」

はなのすきなうし
岩波の子どもの本

おはなし マンロー・リーフ
 え    ロバート・ローソン
はなのすきなうし に対する画像結果

2月の初めに立春を迎え、今年も季節は暦の上では春となりました。まだまだ寒い日もありますが、桜や、チューリップ等の春咲きの植物たちは、一年に一度の機会を楽しみに、土の中や蕾の中で少しずつ準備をしていることでしょう。
「はなのすきなうし」というお話はそんな花のにおいをかぐのが大好きなスペインに住む、うしのお話です。この絵本も、子どもの頃 大好きでよく母親に読んでもらいました。その頃は単純にこのお話の展開を楽しんでいたように思いますが、自身が母となり、この絵本を子ども達に読んで聞かせる立場になると、色々と気づかされる事がありました。

話は変わりますが、我が家には、ヨークシャーテリアの小型犬がいます。犬は嫌いではなかったですが、室内で犬を飼う、ということに全く興味がなかったのに運命の出逢いをしていまい、思いがけず一緒に暮らすことになったので、色々と勉強したわけです。
散歩はもとより、ドッグランやドッグカフェ等々、最近は、ワンコと一緒に楽しめる場所やイベントもたくさんあり、お出かけを楽しもうと思っていたのですが、我が家のヨーキーは本当にビビりで、
他のワンコ達と全く遊べないのです。食べることが大好きなので、運動不足になってもいけないと思い、散歩だけは苦心の甲斐あってよく歩けるようになりましたが、家に近づくと嬉しそうに早足になり、帰宅するとホッとした表情をしています。犬といえば、散歩は大好き、広い場所では走り回るものだという私の固定概念は打ち砕かれました。そして、ある日、久しぶりに「はなのすきなうし」を手に取り、孫に読み聞かせていた時に、ふっと我が家のヨーキーが浮かんだのです。
家のヨーキーも、もし飼い犬ではなかったら、フェルジナンドのようにみんなから離れて、木陰に座っていたんだろうなぁと…

動物にも、それぞれ性格があり違うように、子ども達にももちろん個性があります。でも、母親になると、子どもの頃の気持ちは遠のいてしまい、みんなと一緒だと安心、一人でいると友達いないの?
と心配になってしまいがちです。

この物語の主人公「フェルジナンド」のおかあさんも、友達と一緒に遊ばず一日中コルクの木の下で花のにおいをかいでいるむすこの事が、一人ぼっちで寂しくないかしらと心配し、尋ねます。そして、むすこと話し、寂しがっていない事がわかると、よく理解し、むすこの好きなようにしておくのです。絵本の文の中にあるように、本当によくもののわかったおかあさんだと思います。

子ども達は、当たり前ですが、いつまでも小さな子どもではありません。子どもがその子らしくいられる為には、一番近くにいる親の理解が不可欠です。私もそんな当たり前の事に気がつくのに随分と時間がかかりました。みんな一緒ではない、一人一人違って、それでいいということに。

子どもが成長し、社会へ出ていった時には、自分が「はなのすきなうし」のような人かもしれないし、近くにそのような人がいるかもしれない。
でも、普通に認め合い、平等に関わり合える社会であってほしいと願い、また、この絵本を読んだ
子ども達の心の中に、ぼんやりとそんな感覚の芽が宿ってくれるといいなぁと思うのです。

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