絵本「クリーナおばさんとカミナリおばさん」

クリーナおばさんカミナリおばさん
福音館書店
西内みなみ・さく
堀内誠一 ・え

クリーナおばさんとカミナリおばさん に対する画像結果

たくさんの電化製品にお世話になって日常生活を送っている私たち。私は、機械音痴というのもあって、自宅の電化製品事情は最先端ではありませんが、それでも朝は電気仕掛けで様々な電化製品が、起きる前から働いてくれています。朝、停電が起きたら洗濯も掃除も終わらないし、ご飯も炊けていないでしょう。ありがたいことです。



私は常々、そんな有難い電化製品達には、命あるものと思って接しています。暑い夏にブンブン働いている冷蔵庫、毎日の洗濯はもちろん、季節の変わり目には毛布などの大物もたくましく洗ってくれる10年選手の洗濯機、子ども達が学生だった頃のお弁当作りには、なくてはならなかった電子レンジ、他には、空気清浄機、ドライヤー、掃除機、テレビ…もう数え切れません。

この子達が壊れて、廃棄しなくてはならなくなった時には、「今までありがとう」という気持ちで いつも見送ってきました。電化製品だけではなく、長くお世話になった物も同じです。
そんな気持ちが芽生えたのは、もしかしたら子供の頃、この絵本を読んだからかもしれません。

お話は、掃除機のクリーナおばさんがせいそうトラックに乗せられてごみじまに運ばれていくところから始まります。トラックに乗っている捨てられた電化製品達は、口々に「まだ 働けるのに」と、文句を言いますが、ごみじまにガシャガシャと捨てられてしまいました。
周りには捨てられた電化製品達がたくさんいてみんなに「さけんでみても、むだだよ」と言われます。それでも、クリーナおばさんが「もういちど、どこかではたらいてみせる」と頑張っていたその時、ごみじまにカミナリが落ちて、カミナリおばさんがやってきます。
そして…  カミナリやまに連れていかれて…というお話。

このお話は、絵本「ぐるんぱのようちえん」と同じ、西内みなみさんと堀内誠一さんによって作られた絵本です。堀内誠一さんと言えば、前回紹介した「こすずめのぼうけん」と同じ画家の方ですが、全く絵のタッチが違います。「こすずめのぼうけん」は、写実的でやわらかいタッチですが、こちらは、直線的で、電気がビリビリしている感じが伝わる絵になっています。
その元気な絵と面白いストーリーの中で、インパクトのあるグイグイ系のカミナリおばさんが頼もしく、一気に読み終わってしまいます。


ごみじまのくらーい夜に、ババババ ビビビビ…とやってきて、「ほいよーっ」とクリーナおばさんに乗ってかみなりやまに連れていく展開が本当に爽快で、また、ごみじまのくらーい夜と、電気が流れてからの明るい画面が対照的、まるでクリーナおばさんの明るくなっていく気持ちに比例しているようです。


根底には、ごみ問題や使い捨ての時代へのメッセージなど、子ども達に何かを感じてもらいたいものもあるのかなと、大人は色々感じますが、単純に面白くて、たくさんの子ども達に届けたいと思える楽しい絵本です。ただ、もう大人になってしまった私は、人も、誰かの役に立ってこそ、必要とされてこそ、生きがいを感じるものではないかな、そんな大切なことが絵本を読んだ子ども達の心の中に灯ってくれるかな、と思いながら読み聞かせしています。

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