絵本「じめんのうえと じめんのした」

「じめんのうえと じめんのした」

福音館書店
アーマ E. ウェバー ぶん・え
藤枝 澪子      訳

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木や草や花、普段食べている野菜、また、動物など、地球の陸の上と下に住んでいる様々な生き物は普段見えている地面の上と見えていない地面の下を、うまく使い分けたり役割を担ったりしなが生きています。
植物は地面の上で日光や空気を取り込み、地面の下からは水や養分を吸い上げて栄養分を作ります。
その植物を、動物が食べ、植物を食べる動物を他の動物が食べたりして栄養を得ているのです。

この絵本は、そのような自然界の生き物達の営みやつながり、また、目に見えないところでも生きていくためにふつふつと育まれている営みなどを、小さな子どもでも楽しめるように、シンプルな色使いの絵でわかりやすく教えてくれる、かがくの絵本です。
太陽や土、木や花や野菜たち、その恵みをいただく私たち人間も含めた動物や鳥や虫たち。現代の食べ物や嗜好品、また、自然を破壊して得た物で溢れた現代では、大切な食物連鎖の在り方を大人も、いま一度、考えなくてはいけないと、久しぶりにこの絵本を読んで思ってしまいました。

この地球が、環境破壊によって温暖化などの危機に扮している現代、戦争が人々の生活や命を奪っている今、自分には何ができるのか考えてみればみるほど、未来が心配になる時があります。
私の孫の孫のそのまた孫が生きる時代にも、豊かな自然が残されている美しい地球であってほしいと、願います。

「じめんのうえとじめんのした」という絵本を見て、なんだか壮大な話になってしまいましたが、この絵本を見ていたら、地球は人間だけのものではないと改めて感じたのです。
大変な時代を生きていくであろう子ども達が、ありとあらゆるものの命を尊いと思える人に成長してほしい、人間の何かを生み出していく創造力や知恵、技術等を、発展ではなく守っていく力として使うことが出来たらなと、私は思います。

絵本「はけたよ はけたよ」

「はけたよ はけたよ」
偕成社
かんざわ としこ ぶん
にしまき かやこ え

【衣服の着脱が出来る喜びが感じられる】はけたよはけた【現役保育士がレビュー】 | 保育士Ryuのおすすめ絵本紹介ブログ

「たつくんはね、ひとりで パンツがはけないんだよ。」という、話し言葉のように始まるこの絵本が、私の歳の離れた弟は大好きでした。夜、寝る前に 忙しい母の代わりに何回も読み聞かせたのを覚えています。
たつくんがパンツをはこうと、片足を上げて「どでん!」もう一度起き上がってまた「どでん!」
というところでケタケタとよく笑っていました。

我が家の子ども達も、この絵本が大好きで、「わんわん にゃーお ちゅうちゅう んもうー
ひひん」と、動物の泣き声を真似したり、たつくんと一緒に、どでん!と、ひっくり返ったりして楽しんだ思い出があります。

パンツが上手くはけなくて、たつくんがはかずに外へ飛び出すと、「しっぽのないおしり。つるつるのおしり。あはははは。」としっぽのある動物たちに笑われるます。
おしりを出したままのたつくんは、結局、泥だらけになってしまってお家へ帰って来て、着替えた時に、思いがけずパンツがはけてしまい、更にお母さんが縫ってくれた素敵なズボンもはけちゃうの!
嬉しい嬉しいたつくんは、動物たちに見せに行き、みんなにうらやましがられ、「ぼく、ひとりで
はいたんだよ」って、得意げに伝えるんです。

子どもも、2歳くらいになると、個人差はありますが一人でなんでもしたがる時期があります。パパやママに甘えたい時、一人で頑張りたい時、子どもの気まぐれな自我の芽生えに振り回されながら、私も3人の子を育ててきました。忙しい毎日の中で、子どもの気まぐれにいつもいつも余裕をもてたわけではありません。自分がしてしまった方が早くて助かる時もあるしね。
寝る前に子どもにこの絵本を読んでいると、明るい配色の柔らかいタッチの絵と、可愛い動物たちとのやりとりや、できなかったことができた時のたつくんの笑顔に癒され、幸せな気持ちになれたことを思い出します。そして更にその昔、母に読んでもらった枕元のぬくもりを思い出すのです。母の読み方も…。それは、心の中の宝物です。
絵本て、やっぱり子どもだけのものではないですよね。

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絵本「いもうとのにゅういん」

「いもうとのにゅういん」
福音館書店
筒井頼子 さく  林 明子 え

こどものとも323号2月号「いもうとのにゅういん」(筒井頼子さく/林明子え) / 古書追分コロニー / 古本、中古本、古書籍の通販は「日本の古本屋」

この絵本は、前回 載せた「あさえと ちいさいいもうと」の続編のような設定の絵本で、あさえと妹のあやちゃんが、少し成長した様子で描かれています。

あさえが幼稚園から帰って来ると、お母さんがぐったりしたあやちゃんをおんぶして、病院へ行くところで、診察を受けた結果、盲腸の手術をする事になります。あさえは、幼稚園から帰って来た時、お気に入りの人形が、朝寝かせた場所にない事に「また、あやちゃんのいたずらだ」と、腹を立てていましたが、手術をすると聞いて、とても心配になります。

お母さんが病院へ行ってしまった後に、天気が急変し、雷雨になってしまい、雷⚡の怖さと、あやちゃんが心配な気持ちが重なりとっても不安になってしまいます。
子どもの頃、私も雷⚡が大嫌いでした(平気な子いる?)。だから、すごく怖かったよね。
程なく、お父さんが帰って来て、あやちゃんの手術も無事終わったと連絡も来て、次の日お見舞いに行くことになり、あさえは、あやちゃんに持っていったら喜ぶか、一生懸命考えて…

   

結構ストーリーを紹介してしまいましたが、お話と林 明子さんの絵の描写が素晴らしくて 最後はホロっとしてしまいます。いつも、自由気ままな妹に腹を立てることも多いお姉さんですが、
いないと寂しい…病気ともなれば、家の様子もいつもと違ってしまって心がざわざわします。大人であれば、何気ない日常の有難さに気付くというところでしょうか。
手術を終えたあやちゃん喜ばせたくて、あさえが渡したものがわかった時には、私もあさえちゃんを抱きしめたくなりました。
家族というものは、こういう様々な試練を乗り越えて、絆が生まれていくのでしょうね。また、心が成長するって、こんな瞬間なのでしょうね。そういう心の動きが、繊細で温かい絵の描写で丁寧に綴られています。

      

そして、やっぱり 林 明子さんの絵なので、細かい部分まで楽しくなっています。あやちゃんの手には点滴の跡があったり、病院のロビーには「はじめてのおつかい」のみいちゃんやお母さんと赤ちゃん、めがねおじさんもいます。お父さんと二人の夕食では、お気に入りの人形「ほっぺこちゃん」にもご飯が並べられていたり…他にも色々…
細部に渡り、丁寧な描写で 読み聞かせだけではない、子ども達が自分で絵本を開きたくなる楽しさや温かさがたくさん詰まっている傑作です。

         

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絵本「あさえとちいさいいもうと」

「あさえとちいさいいもうと」
福音館書店
筒井頼子 さく
林 明子 え

あさえとちいさいいもうと に対する画像結果

この絵本は、前回ご紹介した「はじめてのおつかい」と同じ 筒井頼子・林 明子さんのコンビで作られた絵本で、発行日を見ると 丁度「はじめてのおつかい」の3年後くらいに作られています。

          

ストーリーは、あさえが家の前で道にチョークで絵をかいて遊んでいたら、銀行に行きたいお母さんにお留守番を頼まれます。更に妹のあやちゃんがねんねしたばかりで、家においてちょっと行ってくると告げられてすぐ、あやちゃんが泣いて起きてきてしまいます。
あさえは、がぜん「お姉さん」を発動して夢中で絵をかき、あやちゃんを喜ばせようとしますが、顔を上げるとあやちゃんがいなくなっています。あさえは妹をさがし、いつも行く公園へ走りました。あやちゃんを心配して走るあさえの気持ちが、絵と一体になって緊迫感を描き出しています。
あさえもまだ、小さな子どもだけれど、あやちゃんのお姉さんとして心配する姿は、小さなお母さんのようです。
お姉さんやお兄さんとして生まれた方なら、一度は経験したことのある思いではないでしょうか。

また、「はじめてのおつかい」同様、この絵本も絵探しが楽しめます。あさえがあやちゃんをさがして走る道の途中には、「はじめてのおつかい」で出てきたおしゃべりおばさんや、サングラスのおじさん、また、最後に出てくる公園にはみいちゃんがいます。
あら、みいちゃんとあさえちゃんは、同じ町に住んでいたのね~なんて、子どもに読み聞かせしながら、楽しい発見をしたのも思い出です。子ども達は、嬉しそうに得意げに、瞳をキラキラさせて、教えてくれました。絵本って、本当に楽しいですね。
                


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絵本「はじめてのおつかい」

「はじめてのおつかい」

福音館書店
筒井頼子・さく  林 明子・え

はじめてのおつかい | ことり文庫の絵本のある暮らし

今年も もう3月。4月になれば新しい年度が始まります。環境が変わることにドキドキワクワクしている人もいれば、不安で不安でしょうがない人もいるでしょう。
私も新しい事、未経験の事に対しては二の足を踏む性格なので、保育士の頃 4月に泣きながら登園してくる3歳児の子ども達の気持ちに寄り添うことを苦痛に思った事はありませんでした。「そりゃそうだ、そうだよねえ」と、よしよししたものです。

そういう私も、今までの人生で仕事や子育て等、頑張らなくてはいけない場面が何度かあり、その度に勇気づけられてきた絵本が「はじめてのおつかい」です。
この絵本に初めて出逢ったのは、私が小学4年生の頃で、弟が幼稚園から月間絵本として持ち帰って来た時に母が読んでくれました。初めて読んでもらった時からこの絵本が大好きになりました。
ストーリーはもちろん、林明子さんの絵が大好きで、何度も何度も繰り返し読んで、見て、読んで、見て、絵本はボロボロになっています。

 

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忙しいママにおつかいを頼まれた5歳のみいちゃんは、はりきって牛乳を買いに、いつもママと行く坂のてっぺんのお店へお金を握りしめて歩き始めます。
大人から見れば些細なことでも、5歳のみいちゃんにとってドキドキすることばかり。自転車とすれ違ったり転んでしまったり、様々なドキドキをくぐり抜けてやっとお店のおばさんから、牛乳を渡された時に、「ぽろんとひとつ、がまんしていたなみだがおっこってしまいました」となるのです。

保育士という仕事をしていたせいか、子ども達と一緒に頑張る機会も多かったのですが、その度に 緊張する自分に力をくれたのは いつも子ども達でした。子どもって小さいのにすごいパワーを持っている生き物です(笑) 自分だって緊張しているのに、見に来てくれたパパやママ、大勢のお客さんの為に、今まで練習して来た通りにまっすぐな瞳で先生を見つめて頑張ってくれるのです。その姿に 何度も救われて仕事を続ける事ができたのだと今でも思っています。みいちゃんだってそう、忙しいママの役に立ちたくて頑張るんです。「ぎゅうにゅう くださあい!」って、自分でもびっくりするくらいの大きな声を出して…。
みいちゃんのママもきっと、必要だった牛乳を買って来てくれて助かったのと同時に、みいちゃんの頑張りに勇気づけられたことでしょう。
子どもの純真な気持ちに後押しされながら、育児を頑張るママたちに読んでほしいなと思える 素敵な絵本です。

あと、この絵本にはまた別のお楽しみが隠されています。絵探しです。絵探しと言っていいのか、どう伝えていいのかわからないですが、見開き7~8ページくらいのちょっとした街並みのところをよく見てみると面白いことに気が付いたり、お店の名前が作者の名前だったり、お店の猫の動きがページをめくる毎に面白かったり、掲示板の張り紙を読むと気が付く事があったりと、とにかく隠れミッキーみたいにたくさんお楽しみが隠れているのです。 最後の裏表紙までお話が続いている本当に楽しい名作の絵本だと思います。

   

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