絵本「こすずめのぼうけん」

「こすずめのぼうけん」
福音館書店
ルース・エインワース 作
石井桃子       訳
堀内誠一       画

こすずめのぼうけん (こどものとも傑作集) | 絵本, 本, エインズワース

4月も半ばを過ぎ、桜の花は散り新芽が勢いよく伸びています。3月には「ホーホケッケッ」と、ちょっと下手くそだったウグイスの鳴き声も「ホーホケキョ♪」って、上手になってきました。今頃は、街中に住む すずめも、子育て真っ最中ではないのかな?

今頃、日によっては、少し汗ばむ季節になると、車の運転中、バタバタと安定しない飛び方のすずめにぶつかりそうになったことがあります。また、ワンコの散歩中に電線から電線にフラフラと飛んでいくこすずめを見かけたことも何度か…そんな時、私はこの「こすずめのぼうけん」という絵本を思い出します。

きづたのつるの中にできた 巣の中に住んでいるすずめの親子。このこすずめにやわらかい茶色の羽が生え、翼をパタパタさせることができるようになると、お母さんすずめが飛び方を教え始めます。

お母さんに教えてもらった通りにして羽を動かすと、本当に空中に浮かんで飛ぶことができたこすずめは、お母さんに言われた生け垣の上までという約束を忘れて、生け垣を通り越して、広い世界へ飛んでいきます。
「ぼく、これなら、あの いしがきの てっぺんより、もっと とおくへとんでいける」
「はたけをこえて、そのさきの いけがきを こえて、そのさきのかわをこえていける。ぼく ひとりで、せかいじゅうをみてこられる」って。できなかった事ができた時、ここからはもうなんでもかんでも、できる気になっちゃいますよね。でもやっぱりまだ小さな子どもでした。
最初は楽しかったけど、羽が痛くなってしまった こすずめは休みたくなり、飛びながらみつけた からす、やまばと、ふくろう、かも、の巣を訪ねますが、鳴き声が違うので仲間じゃないねぇ、中へ入れることはできないねぇと、言われてしまいます。

みんな自分の仲間か尋ねるときに
「おまえ、かあ、かあ、かあ、って、いえるかね?」
「おまえさん、くう、くう、くうっていえますか?」
「おまえ、ほうほう、ほうほうっていえるかね?」
「おまえさん、くわっ、くわっ、くわっていえる?」鳴き声で確かめるのですが、残念な事に、こすずめは ちゅんちゅんちゅん しか言えないので、中に入れてもらえないのです。
堀内誠一さんのやわらかいタッチの優しい絵の中に、自然界の掟みたいなものがやんわりと描かれていて、お話を読み進めていくと、読んでいる私の腕まで痛くなってきそうな緊張感が伝わって、最後にお母さんに会えた時には、本当によかったなぁと、安心します。
眠る前の読み聞かせは、特にそんなお話ってなんだかとってもいい気がします。安心して眠れそうな気がしませんか?

ブログを書いていたら、私も亡くなった母の温かさを思い出して会いたくなりました。
字数が多めなので、小学校の読み聞かせでは、1、2年生くらいだと、聞いてくれるかなと最初は心配になってしまうかもしれませんが、繰り返しの文体も多く、わかりやすいストーリーなので、私も今度チャレンジしてみようかと、久々に本棚から出してきて思いました。

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童話「いやいやえん」

「いやいやえん」
福音館書店
中川李枝子 さく
大村百合子 え
子どもの本研究会 編集
いやいやえん|福音館書店

「いやいやえん」は、有名な絵本「ぐりとぐら」の作者 中川李枝子さんと山脇百合子さんの姉妹によって作られた童話です。「大村」というのは山脇さんの旧姓です。
お話は字が多く、絵は挿絵的な感じですが、イメージを膨らますのに丁度いい具合です。私もこの本が大好きで、よく母に読み聞かせてもらいました。字が多いので、お話をひとつづつ、何日かで読んでもらったのを覚えています。

お話は、「ちゅーりっぷほいくえん」「くじらとり」「ちこちゃん」「やまのこぐまちゃん」
「おおかみ」「山のぼり」「いやいやえん」の全部で7つ。
保育園での生活がお話の中心で、どのお話にも「しげる」という元気でいたずらっ子の男の子が登場し、しげるが保育園や保育園をお休みした日などに体験した様々な遊びや事件がいっぱい詰まっています。

お話を作られた頃、中川李枝子さんは保育士をされていたそうで、保育園での先生としげるのやりとりや、遊びの様子、子ども達の会話などに、保育士ならではの視線や愛情が感じられます。
また、一番最初のお話で「ちゅーりっぷほいくえん」のやくそくがでてくるのですが、それがなんとも、的を得ていて面白いし、また、そのやくそくを守らないで一日で17回も叱られる「しげる」のしたことが笑えてきます。これだけで「しげる」がどんな子どもかわかっちゃうくらい^^; 先生も叱りながら「子どもらしい」とは思っているはずです。ちがうかな…。

「くじらとり」というお話の中で年長組の男の子達が積み木で作ったりっぱな船に乗って、くじらを捕まえに冒険に出かけるお話がありますが、お話が進むうち、どんどん空想の世界へと飛んで、現実の世界と行ったり来たりしながらの面白さを感じます。どのお話もこんな風に、ワクワク感たっぷり、ユーモアたっぷりで、冒険へ行ったからこんなことができるようになったとか、失敗したから、次はしないとか、教訓的なものは一切なくて、子どもの世界の淡々とした日常の中の遊びやハプニングや、空想の面白さが台詞や題材の中にあふれています。いたずらっ子のしげるや子ども達が、先生や母親の大きな愛情の中で、本当にのびのびと子どもらしく毎日を過ごしている様子が描かれているのです。

7つも、お話が入っているので、かなりのボリューム感で、読み聞かせをするとしても、一日では読めない感じですが、保育園に通う子ども達は、身近な世界観でとても楽しめるのではと思います。
また、「やまのこぐまちゃん」や「おおかみ」で登場する赤いバケツをもったこぐまや、ブラシとタオルをもったおおかみは、「ぐりとぐら」や、「そらいろのたね」などの絵本にも、登場してるんじゃない?って、我が家の子ども達は、また違ったところでも楽しんでいました(^^♪

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