「はじめてのおつかい」
福音館書店
筒井頼子・さく 林 明子・え
今年も もう3月。4月になれば新しい年度が始まります。環境が変わることにドキドキワクワクしている人もいれば、不安で不安でしょうがない人もいるでしょう。
私も新しい事、未経験の事に対しては二の足を踏む性格なので、保育士の頃 4月に泣きながら登園してくる3歳児の子ども達の気持ちに寄り添うことを苦痛に思った事はありませんでした。「そりゃそうだ、そうだよねえ」と、よしよししたものです。
そういう私も、今までの人生で仕事や子育て等、頑張らなくてはいけない場面が何度かあり、その度に勇気づけられてきた絵本が「はじめてのおつかい」です。
この絵本に初めて出逢ったのは、私が小学4年生の頃で、弟が幼稚園から月間絵本として持ち帰って来た時に母が読んでくれました。初めて読んでもらった時からこの絵本が大好きになりました。
ストーリーはもちろん、林明子さんの絵が大好きで、何度も何度も繰り返し読んで、見て、読んで、見て、絵本はボロボロになっています。
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忙しいママにおつかいを頼まれた5歳のみいちゃんは、はりきって牛乳を買いに、いつもママと行く坂のてっぺんのお店へお金を握りしめて歩き始めます。
大人から見れば些細なことでも、5歳のみいちゃんにとってドキドキすることばかり。自転車とすれ違ったり転んでしまったり、様々なドキドキをくぐり抜けてやっとお店のおばさんから、牛乳を渡された時に、「ぽろんとひとつ、がまんしていたなみだがおっこってしまいました」となるのです。
保育士という仕事をしていたせいか、子ども達と一緒に頑張る機会も多かったのですが、その度に 緊張する自分に力をくれたのは いつも子ども達でした。子どもって小さいのにすごいパワーを持っている生き物です(笑) 自分だって緊張しているのに、見に来てくれたパパやママ、大勢のお客さんの為に、今まで練習して来た通りにまっすぐな瞳で先生を見つめて頑張ってくれるのです。その姿に 何度も救われて仕事を続ける事ができたのだと今でも思っています。みいちゃんだってそう、忙しいママの役に立ちたくて頑張るんです。「ぎゅうにゅう くださあい!」って、自分でもびっくりするくらいの大きな声を出して…。
みいちゃんのママもきっと、必要だった牛乳を買って来てくれて助かったのと同時に、みいちゃんの頑張りに勇気づけられたことでしょう。
子どもの純真な気持ちに後押しされながら、育児を頑張るママたちに読んでほしいなと思える 素敵な絵本です。
あと、この絵本にはまた別のお楽しみが隠されています。絵探しです。絵探しと言っていいのか、どう伝えていいのかわからないですが、見開き7~8ページくらいのちょっとした街並みのところをよく見てみると面白いことに気が付いたり、お店の名前が作者の名前だったり、お店の猫の動きがページをめくる毎に面白かったり、掲示板の張り紙を読むと気が付く事があったりと、とにかく隠れミッキーみたいにたくさんお楽しみが隠れているのです。 最後の裏表紙までお話が続いている本当に楽しい名作の絵本だと思います。
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